今から40年以上前のことである。大野耐一氏、新郷重夫氏、鈴村喜久男氏らの指導のもと、5年以上にわたり、トヨタ生産方式を学んだ。先人たちが発せられた言葉は多くはないものの、妙に納得してしまう言葉ばかり。結果に対する考え方は今も色あせず、異彩を放っている。

1回目は、「コストは半分に、システム費用は1/10に! 面白いほど社員の動きが変わる5大ポイント」というテーマで、新刊『トヨタ式ホワイトカラーの業務改善 最少人数で最強組織をつくる』より、業務改善がなぜうまくいくのかを5つのポイントに絞って紹介した。2回目からは、本書の序章を分割して紹介する。なぜホワイトカラーの改善に効果を発揮し、継続して活動できるのか、序章で紹介する歩みにその秘密は隠されている。

トヨタ生産方式から学ぶ

「徹底したムダの排除」を基本思想に、「ムダ取り」や「カイゼン」によって生産効率を高めるトヨタ生産方式。そのモノづくりの思想は、自動車業界を中心に世界中の生産現場で取り入れられ、実践されている。

 トヨタ生産方式は、トヨタ自動車の副社長だった大野耐一氏が、豊田佐吉翁や豊田喜一郎氏が長年かけて蓄積したモノづくりのノウハウを体系化していったものである。

 その大野氏と私が出会ったのは1973年、今から40年以上も前のことであった。当時私は矢崎総業に勤めていて、教育担当や人事担当、工場長を経て社長室に所属していた。矢崎総業は自動車部品をはじめ、電線やガス機器などを製造するメーカーで、特に自動車用ワイヤーハーネスでは世界トップシェアを誇る。同社はトヨタとは資本関係はないものの、完成車メーカーと主要サプライヤーとして密接な関係を築いていた。

 当時の社長方針で矢崎総業の工場にもトヨタ生産方式を導入することになり、技術役員と私の2人がトヨタの工場に研修のために赴くことになった。初日、プレス工場を半日ほど見学した後に事務所に戻ると、大野氏がその場で私たちにこう言った。