トヨタ生産方式の導入とともに、生産現場はみるみる変わっていった。すると、当時の社長から、本社改革の命を受ける。しかし、情報という目に見えないものを相手にするのは一筋縄ではいかなかった。紆余曲折を経て、ある程度の成果を挙げることができたが、驚くことに、大勢のトヨタ社員の前でスピーチをすることになる。

1回目は、「コストは半分に、システム費用は1/10に! 面白いほど社員の動きが変わる5大ポイント」というテーマで、新刊『トヨタ式ホワイトカラーの業務改善 最少人数で最強組織をつくる』より、業務改善がなぜうまくいくのかを5つのポイントに絞って紹介した。2回目からは、本書の序章を分割して紹介している。なぜ、ホワイトカラーの改善に効果を発揮し、継続して活動できるのか、序章で紹介する歩みにその秘密は隠されている。

工場改革を終え、本社改革に着手

 私はトヨタでみっちりと学んだトヨタ生産方式を、矢崎総業の主力工場にも順次導入していった。トヨタ生産方式をわかりやすい言葉で置き換えれば「見える化」だ。たとえば、「必要なものを、必要なときに、必要なだけつくる」という「ジャスト・イン・タイム」の考え方があるが、その代表的な方式として「かんばん方式」がある。

「かんばん方式」では、部品名や品番、置き場所など、商品に関する情報がひと目でわかるラベルを使って部品や材料を管理する。「かんばん」は生産工程における生産・運搬の指示情報であり、目で見る管理ツールの役割を果たしている。

 資材や工程を「かんばん」に表示して、ひと目で見えるかたちにする。言い換えれば「ひと目管理」だ。工場のプロセスを見える状態にしておき、ムダがあれば徹底的に排除する。こうした考え方は、後に私がホワイトカラーの業務改善を実践するうえでの根幹となった。

 それを実践するチャンスが訪れたのは工場改革がだいぶ進んだ頃である。あるとき、矢崎総業の矢崎裕彦社長(当時)が私にこう言った。

「石橋君。現場じゃトヨタ方式の成果が出て、秒の単位で仕事が進んでいる。それなのに本社の仕事はいまだに1ヵ月単位だ。どうにかしなければ」