オリンピック招致の最終プレゼンを契機に、各所で注視されている「おもてなし」。日本人の細やかな心づかいを製品、サービスに反映させて収益向上につなげようと考える企業は多いと思うが、そこに落とし穴はないか?グロービス経営大学院の山口英彦が近著『サービスを制するものはビジネスを制する』のコンセプト等も反映させながら問いかける連載、第3回。

※この記事は、GLOBIS.JP掲載「おもてなしで頑張らない(おもてなしで飯が食えるか?)」の転載です。

 先日、ある会合でお会いしたITサービス企業の役員の方から「弊社のサービス水準を向上させるため、ホテル業界あたりで経験を積まれたおもてなしのプロに指導を願いたいのだが、誰か紹介してもらえないか?」と相談を受けました。

 私は(先方の意気込みに水を注すのは申し訳ないと思いつつ)「指導を受けないよりは受けた方がマシかもしれませんが、適切な打ち手は他にあると思いますよ」とお返事して、いくつかの代替策を提案しました。このIT企業に限らず、ディスニーランドやリッツ・カールトンといった有名ブランドのノウハウに学んで、自社のサービス向上に活かそうとする企業は少なくありません。でも、何かずれている気がしませんか? 経営者がおもてなしという、ともすれば精神性にのみ拠りがちな方策を語ることで、仕組みの構築等で対処すべき現場の根本的な問題から目が逸らされてしまっている…そんな印象を私は受けています。

 こうした問題意識も反映し、今回のタイトルは「おもてなしで頑張らない」です。

「これから日本のサービスを、おもてなしを武器に盛り上げていきたい」と意気込んでいる人から見れば、拍子抜けするタイトルかもしれません。でも、おもてなしブームに乗せられて、自分のビジネスで「おもてなし強化するぞ!」なんて掲げてしまう前に、

・わざわざ難易度の高いおもてなしで勝負する必要があるのか?
・(おもてなしで勝負するにしても)現場がやるべきことを思い切って絞り込めないか?

を一考していただきたいのです。