経営 × オフィス

弱者へのストレスのつけ回しがブラック化の真因?
うつ社員が溢れる「忍耐消滅職場」はあなたがつくる

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第4回】 2014年7月9日
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 ディスティミア型うつは、メランコリー型うつと発現の仕方が違うだけで、その根本原因は同じだ。ストレスの受け止め方が違うゆえに、違う症状が出て来ているという可能性が高い。管理職は、新型うつを「甘え」と決めつける前に、この点を考慮する必要がある。

 もちろん、「だからしょうがない」という問題ではない。本当の問題は、うつを発症しなくてはならないほど、あるいはその予備軍を大量発生させるほど、ストレスを抱えさせる職場の仕事にある。それを改善させるのは、より上の経営者や管理職の仕事に他ならない。前述の「制度の問題」が根幹にあるのだ。

 ならば、新型うつの若者を「甘えだ」と切り捨てるのではなく、それが「職場の質の問題」として対処するのが本当に必要なことなのだ。それを「個人の性格の問題」として片付けようとすることは、ブラック組織の発生を助長することに他ならない。

 それを理解した上で、組織内の個人が受け止めるストレスをいかに分散させるか、いかに発散させるかを、ケアする必要があるだろう。

ブラック化に一役買っていないか?
日々感じるストレスを冷静に分析せよ

 冒頭でも述べたように、制度的ひずみの深刻化とそれに伴う社員間でのストレスのつけ回しは、組織全体がブラック化して行く予兆である。ブラック企業と言っても、なにも経営者が反社会的な人間であったり、社会規範を逸脱したパワハラが日常的に横行したりというような、「根っからのワルい会社」ばかりではなかろう。原因を制度的ひずみとするならば、ブラック企業予備軍は企業社会に無数に存在することになる。今は一見普通に見える読者諸氏の会社も、気づけばブラック化しているかもしれないのである。

 こうした「ブラック化」を引き起こさないためにも、筆者は新型うつの対策として、うつ病発症に対する対処よりも、発症させないための環境づくりのほうがずっとやりやすく、費用対効果も高いと考えている。簡単に言えば、ストレスを1人で溜め込まないための支援だ。具体的な組織の対処法については、また稿を改めて述べる。

 足もとでは、個人で対処できることから始めたい。まずは、メンタルが弱いがゆえに、部下や弱い立場の者に責任を押し付けていることはないか、セルフチェックしてみよう。そして、そんなことをしてしまう自分にかかっている本当の「ストレス」とは何か、それを冷静に分析してみよう。

 それだけでも、やれることはたくさん出て来るはずだ。

世論調査

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

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