安倍政権は昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略-JAPAN is BACK」において、女性の活躍推進を成長戦略の中核と位置付け、今年6月に発表された新しい成長戦略「『日本再興戦略』改訂2014―未来への挑戦―」においても、鍵となる施策の一つとして「担い手を生み出す~女性の活躍促進と働き方改革」を挙げた。なぜ女性が活躍できないのか、まずはその現状を確認した上で、政府の女性の活躍促進策の課題について考えてみたい。

なぜ日本の女性は活躍できないのか

いけもと・みか
1989年 日本女子大文学部卒、同年三井銀行入行、三井銀総合研究所出向。太陽神戸三井総合研究所、さくら総合研究所を経て、2001年より現職。専門分野は女性・子どもにかかわる政策(保育・教育政策、労働政策、社会保障等)。

 現在、日本の女性が活躍できない最大の要因は、仕事と子育ての両立が容易ではないということにある。

 まず、子どもを預ける場所がない。子どもを保育所に預けて働こうとしても、都市部を中心に保育所に入れない待機児童が約2万3000人(2013年4月)もいる。小学生の放課後の保育(学童保育)にも約8700人(2013年5月)の待機児童がおり、保育所には入れても、小学校入学時に学童保育に入れずに母親が仕事をやめざるを得ない「小1の壁」も存在する。さらには、保育所や学童保育に入れはするが、その質に不安や不満があり、子どもをそこに預けて働く気になれないという人もいる。

 また、保育の問題ではなく、労働時間が長く、子どもとの時間が十分に確保できないために、仕事の継続をあきらめる女性も少なくない。週50時間以上働く人の割合は、OECD諸国平均の8.8%に対して日本は31.7%と、34ヵ国中トルコに次ぐ2番目の高さである(OECD Better Life Index 2013)。上場企業役員に占める女性割合が最も高いノルウェーでは、2.8%と長時間働く人の割合は低い。

 こうした長時間労働の慣行により、男性が家事・育児等の無償労働にかける時間が短いことも、女性の活躍を阻む一因である。日本の男性の無償労働時間(1日当たり)は、OECD諸国平均の141分に対して69分と約半分であり、日本の女性は男性より257分も多く家事・育児等を行っている(図表)。ノルウェーの女性が家事・育児等にかける時間は、日本の女性より116分も少なく、無償労働時間の男女差も30分と小さい。