消費税率8%への引き上げについて、当面の経済への影響が、あらかじめ想定されていた範囲内のものかどうか大きな話題となっている。筆者は、増税を行ったのだから、短期的には多少の経済への悪影響は避けられず、それはやむをえないと考える。重要なことは、その先にある経済・社会の姿を、社会保障・税一体改革の原点にさかのぼって考えるてみることだ。その思いから、家計ごとの受益と負担の関係を試算してみた。

消費税率引き上げと経済状況

 14年4月から消費税率が8%へ引き上げられ、来年10月には10%への引き上げが法律で決まっている。8%への引き上げの経済に与える影響について、4~6月のGDP速報値が年率6.8%の大幅なマイナスとなり、「想定内」かどうか見解が相拮抗してきた。

 筆者は、消費税増税が行われ、平年ベースで8兆円以上の購買力が国民から国に移転された(もっとも、公共事業などで5兆円分を返すことになっているのだが、資材や人手の不足により進捗していない)わけだから、短期的に経済にマイナスの影響が及ぶことは避けられないと考えている。

 今後は消費税率10%への引き上げの最終決断が年末までにも行われるが、問題は、本当に景気の腰折れをもたらすような状況になるかどうか、経済のデフレからの脱却が本物かどうか、ということであろう。

 この点について、欧州諸国では、それほど経済状況がよくなくても、継続的に消費税を引き上げて税収を確保し財政再建を優先させてきたが、そのために経済が落ち込むという現象は見られなかった。

 たとえばドイツは2007年に16%から19%へ、英国は10年に15%から17.5%へ、さらに11年に20%へ消費税率を引き上げたが、今日まで経済は順調に成長し、税収も増加している。

 わが国の前回(1997年)の消費税率引き上げ(3%から5%へ)後の経済の落ち込みは、直後に生じた国内とアジアの金融危機の影響が大きく、今回そのようなことがない限り、回復基調に戻ってくると思われる。