物事に夢中になれる
大人が求められている
では、どのような大人げなさが求められるのかというと、それは物事に夢中になることだというのです。そして、いったん夢中になれることを見つけたら、それがどんなに小さなことやくだらないことであっても大事にするべきで、たとえば成毛さんの場合、使えるお金はすべて本に注ぎ込んできたそうです。30代前半までは給料の7割が本代に消え、そのせいで生活の苦しい時代もありましたが、「今の自分があるのは、間違いなくこういったお金の使い方をしたおかげである」と断言しています。
私の考える最高の自己投資は読書である。読書をして様々なインプットをし脳を刺激すれば、考え方や発想が変わってくる。これによって間違いなく成功の確率は上がるし、それに応じて収入も上がる。さらに金銭的な話にとどまらず、読書は人生そのものを豊かにしてくれるのだ。本を読むことほど、自分の世界を広げてくれることはないのである。(174ページ)
かくして、本や読書に対する愛情や熱情がHONZの立ち上げにつながったことは間違いないと思われるわけなのですが、じつは成毛さんの真骨頂は「あまのじゃく」にあります。本人の言葉を借りれば「子どもの頃の反抗期が延々と続いているイメージ」だそうです。
私のスタイルの説明は単純である。自分より偉い人や強い人の意見をいったんはすべて否定していくのだ。もし、こうした人たちが自分と同じ考えを持っていたとしても、おとなしくしているのは気に入らないから、自分の考えを真逆に変えてしまう。偉い人がいうことは全部悪い冗談だ、そんなことあるわけがない、と自らを思い込ませ反対意見に回っていく。
なぜこのようにするのかといえば、権力を持った人の考えは、完璧な独裁者でもない限り、民主主義の論理に沿って部分最適に向うからである。乱暴に言えば、自らの地位を守るために自然と大衆に迎合していくのだ。そして、すべての意見を公平に扱おうとすれば必ずどこかで無理がでてくる。常々、平均から逸脱することが得だと考えている私としては、こうした論理に飲み込まれることは、耐えられないのである。(72ページ)
こうした「逆張り」の発想は、「父娘の就活戦略」にもいかんなく発揮されました。就職活動に出遅れた愛娘に赤色のスーツを着て面接に行くようにアドバイスし、みんなが就活本を参考にして無個性になっていくなら「就活本の逆をやれ!」――そう助言し、『就活に「日経」はいらない』という本まで書き上げてしまいました。
もし成毛さんが「HONZ代表」に加えて「出版社代表」という新しい肩書きを持つに至ったら、一体どのような出版ビジネスを展開するのでしょうか。この稀代の実業家は、きっと大号令をかけるに違いありません。「既存の出版社の逆をやれ!」と。いずれにせよ、かなり手ごわい同業者になりそうです。
◇今回の書籍 59/100冊目
『大人げない大人になれ!』
マイクロソフトの元社長の著者が、創造性・先見性が求められる時代を生きる若者に送る一冊。著者とその周囲の成功者は、みな「大人げない」ひとたちばかり。これは、たまたまではなく、現代社会は、好きなことを貫いて、ひとを感動させて動かすことができれば仕事になる時代なのだ。キャリアプランも語学も資格もいらない、幸せな人生をおくるための考え方。
成毛眞:著
本体1,429円+税
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