ビジュアルコミュニケーションは、さらに柔軟性に
~ブランディング2.0

 2007年当時、AT&Tの事業の中心は携帯事業に大きくシフトしており、その事業特性上、顧客に対して「会社の伝統や信頼性、大きさ」以上に、「身近さ、親身さ、フットワークの良さ、顧客のニーズに応える柔軟性」を訴えていくことがより重要になっていた。

 その変化と呼応するように、AT&Tのブランディングは、「ブランディング2.0」へと一気に加速する。シンボルを中心としながらも、オレンジを新たなブランドカラーとして追加設定し、「B to B」、「B to C」など、訴求の目的や対象によってブランドカラーの配合を変える仕組みや、写真やイラストの表現に関わる規定を細かく設定するなど、柔軟性に富むビジュアルコミュニケーションへの強化が図られたのだ。特に「B to C」向けには新たに追加されたオレンジを多用することで、生活者により親近感を感じさせるコミュニケーションを実現させた。生活者や取引先企業は、シンボルに留まることなく、全体的な世界観から“at&t”ブランドを感じ、体験することができるようになったのである。

想いを伝えるコミュニケーションから共有・共創型のコミュニケーションへ
~ブランディング3.0

 そして、「ブランディング2.0」の導入からわずか3年後の2010年、さらなるブランド体験の強化を図るためにAT&Tの「ブランディング3.0」がスタートする。

 これは、「ブランディング2.0」を通して生活者のライフスタイルへの理解を深めたAT&Tが、生活者とのより親密なコミュニケーションの構築を目指したものである。それまでシンボルとともに記されていたブランド名“at&t”が外され、「一貫性」や「統一感」をある程度保持しながらも、より一層の柔軟性を高めたビジュアルコミュニケーションへと発展する。

ビジュアルの力で、「日本ブランド」を「世界ブランド」へ――ビジュアルコミュニケーションの可能性

「B to B」、「B to C」という表現に象徴される「to」のコミュニケーションから、「B and B」、「B and C」へ。つまり、「and」を軸にする共有型のコミュニケーションへのシフトは、ブランドの世界観を生活者と共有し、共創するためのものである。視覚的なインパクトと親しみを持つ吹き出しや、楽しさや若さをアピールするアイコンなど、ビジュアルをフルに活用することで、生活者に近いイメージが創り出され、ブランドへの共感や強い絆を生み出すことに成功している。

 AT&Tのコミュニケーションの変遷から、ビジュアルが果たす役割の大きさをご理解いただけるだろう。

 ブランドはもはや単なる「マーケティング資産」や「ビジネス資産」ではない。ビジュアルコミュニケーションの力によって、体験され、共感され、共有される「顧客の資産」となってきているのである。