PC価格の暴落ぶりは新聞などでも報道されており、ご承知の方も多いだろう。それは、「不況で売れないから」という理由が大きいが、単に販売店が苦し紛れに値下げをしているだけではない。

 「業界全体として低価格方向に向かっている」というのが事実である。

 PCには、共通のパーツを使うのが普通だ。CPUや液晶、メモリなどは専業のメーカーが製造しており、PCメーカーはパーツを購入して組み立てている。

 正確に言うなら、組み立ても別の会社に任せ、製品の企画・設計や販売だけをしているメーカーも少なくはない。つまり、パーツの価格がPCの売価を大きく左右するのだ。

 特にここへ来て暴落しているのが、液晶の価格だ。PCの部品の中で、は、液晶、CPU、OSがコストの大半を占めている。ネットブックが安く売れるのは、CPUとOSが低価格に設定されているからだ。

 ところが、いわゆる「A4ノート」もネットブック並みの価格になりつつある。こちらは、液晶の値下がりによるところが大きい。

 ユーザーは非常に賢く、安いだけのPCはあまり売れていない。安くて品質のよいPCが売れているのだ。特にデザインや質感を重視したモデルの人気が高い。

 10年ほど前なら、安いパーツを組み合わせただけのモデルも売れていたのだが、今は時代が変わった。メーカーは、限られたコストの中で必死の企業努力を重ねるしかないのだ。

 そんな中で、デザインで成功しているのがアップルだ。「WindowsのPCと一律に比較するのはおかしい」と考える方も多いだろうが、いまや各部のパーツはほぼ共通化されている。大きく異なるのは、OSなどソフトウエアの部分だけだ。

 アップルのビジネスモデルが際立っているのは、同じ形のPCを腐らせずに長く売り続けることだ。3月に新製品が登場したiMacは、2007年の夏に初登場している。

 また「Mac mini」に至っては、05年の夏に登場している。「MacBook」も延々とポリカーボネイトのモデルを売り続けており、いまだに最廉価モデルは同じボディを利用しているのだ。

 ボディをモデルチェンジするサイクルが長ければ、コスト的には非常に優位になるが、目新しさは薄れていくので、売りづらくなって来る。