【課題3】1年で「ISO3統合」をなし遂げる

 3つ目の課題が「ISOの3統合マネジメントシステム」の取得です。

 3統合マネジメントシステムとは、品質(顧客満足)に関するISO(ISO9001)、環境に関するISO(ISO14001)、労働安全衛生MS(OHSAS18001)の3規格を統合したマネジメントシステムです。

 父に、「業界に前例のない統合マネジメントシステムを取得したい」と話すと、

「1年で取得できなかったらやめろ」
 と言われました。

 これはかなり高いハードルでした。
 当時はISO推進担当者を任せられる人材もいませんでしたし、勉強が嫌いな社員がほとんどです。

 父には、

「うちの社員は活字なんか読まねえぞ。どうやって規格事項を教えるつもりだ?」

 と嫌みを言われていました。

 最初、先生をお願いしたのは初老の男性コンサルタント。
 テキストは活字がぎっしり。おじいちゃん先生が話し始めると、3分後には9割の社員が寝落ちしていました。

 そもそもISOを取得するモチベーションなど、まったくないのです。
 そのうえ勉強も、活字を読むのも嫌い。
 その人たちが一日働いて疲れた状態で講習を受けるわけです。
居眠りの要素は3拍子そろっていました。

危機を救った美人女性コンサルタントの指導法

 そんなとき業界紙に、「女性の指導員います」という広告を見つけました。
 私は「これだ!」と思い、すぐ電話をかけました。

 きてくれたのは30代後半の美しい女性。物腰柔らかく、知的な雰囲気で声もよく通ります。

「この先生なら社員のモチベーションを上げられる」

 男ばかりのむさ苦しい職場に美しい女性がやってくるのです。
 社員たちのワクワク感は否応なしに高まるでしょう。

 そのうえ彼女はテキストをマンガにするなど工夫を凝らした授業をしてくれました。

 その後、いろいろな苦難があったものの、なんとか美人先生のおかげで、父と約束した1年で、業界初の「ISO3統合マネジメントシステム」を取得することができました。

 こうして私は「お試し社長」に課せられた3つの課題をクリアすることができたのです。

(第8回へつづく)

<著者プロフィール>
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ! 先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。