創続総合研究所

 クリーン化は、次の段階である可視化の下地作りでもある。会社の実態に沿った財務諸表作りや、法令に沿った労働環境の整理によって経営は“きれい”になり、他人にも会社の本当の姿を把握してもらえるようになる。

 業務のマニュアル化やシステム化にも取り組もう。「社長に聞かないと分からない」「責任が誰にあるのか分からない」といった会社は売れない。売却に向け、業務のありようが誰の目にも分かるようにしておく必要がある。

 売れる会社作りには黒字を出して税金を払ったり、プロに頼んだり、従業員と話し合ったりで、コストも時間もかかる。その手間は株式公開の準備と似ている。

 M&Aが成功しても、すぐに身を引けるとも限らない。円滑な譲渡のため、しばらくは社業の引き継ぎを求められ、売却額も分割で支払われることが多い。

 経営者にとって会社は大事に育てた子どものようなもの。売るために育てた肉牛や競走馬とは違う。だが、売ると決めたなら売れる会社にするため、すぐにクリーン化・可視化から始めるべきだ。

承継者がいないなら
「上手な廃業」も

 事業を引き継いでくれる人が身内や社内にいない。買い取ってくれる会社もない──そうなったとき、企業経営者の眼前に浮上してくる道は「廃業」だ。

 廃業には「倒産に近い廃業」と「円滑な廃業」の2通りがあり、経営者らが私財などを投じないと会社が清算できないのが倒産に近い廃業である。

 一方、清算後に会社の資産が残る円滑な廃業となり、従業員の再就職のめども立つ、売り上げがなくなっても生活できるといった「幸福な廃業」を選べる経営者は現実には少数派だ。

 倒産に近い廃業で、さらに従業員が路頭に迷うことになるケース、売り上げに生活を頼ってきたケースなどでは、廃業は厳しい選択肢となる。

 だが、「経営者当人が頭を悩ます企業」というマイナスの資産、あるいは難資産を遺されて「不幸な相続」に苦しみかねない相続人のことも、一度は考えてみてほしい。「上手な廃業」に通じた税理士や弁護士も増えており、まず彼らに相談してみるのも手だ。

(総合監修/松木昭和)

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