では、どの程度の成長率になるのかというと、現在の実質1.0~1.5%の成長率が、これから年々低下して、2020年過ぎにはマイナスとなり、その後は▲0.5~▲1.0%のマイナス成長が続くであろうと思われます。その場合、先進国でマイナス成長となるのは日本だけです。つまり世界経済のなかで、日本経済だけが縮小します。労働者の減り方があまりにも大きいため、技術の進歩をもってしてもカバーし切れないということです。

 ただし、成長率の相対的な関係と違い、今度は「なるだろう」です。産業革命のような技術進歩が起きれば、マイナス成長にはならないかもしれないからです。しかし、僥倖頼みというわけにはいきません。私の推計では、これまでの40年間のような急速な技術進歩が今後も続くと仮定しました。かなり楽観的な仮定です。それでもマイナスなのだから、これは「ほぼ確実な未来」と言っていい。

人口減少そのものがリスクにあらず
真のリスクはビジネスモデルの後進性

 では、そうした変化が人口減少が日本経済にもたらすリスクかというと、そうではありません。確実ないしほぼ確実なことなのだから、リスクとは言えません。日本経済が抱えるリスクとは、マイナス成長によって日本経済自体が「衰退」するかもしれないというリスクです。ちなみに、日本よりGDPの小さい先進国はいくらでもあるのだから、経済の縮小自体は衰退とは言えません。人口が少ない国は、経済が小さくなるのは当たり前です。

 経済の縮小が経済の「衰退」にまで発展してしまう理由は、日本企業のビジネスモデルの後進性にあります。他の先進国と異なり、量産効果による価格の安さこそが、日本製品の競争力の根源です。しかしマイナス成長となり、生産規模が縮小すれば、量産効果が逆に働き、価格は上昇せざるを得ません。競争力の大幅な低下から、国際収支が赤字に転落し、需要抑制政策や円安・原料不足による生産の低迷で、経済は衰退の一途を辿るといったリスクが考えられます。そうなると、先ほどの将来予測も大きく下振れすることになります。

 すなわち、リスクをもたらしているのは労働者の減少や経済の縮小それ自体ではなく、日本のビジネスモデルの後進性です。他の先進国なら、もし日本のような労働者の減少に見舞われて経済が縮小しても、衰退にまでは至らないでしょう。人口減少下の経済のあり方を考えるとき忘れてはならない視点です。

 次に、社会保障制度についてですが、現在の年金制度は早晩破綻するでしょう。もともと年金制度は、急速かつ大幅に高齢化する日本には、不向きな制度なのです。まず、高齢化の速度が速すぎるために、頻繁に大幅な負担の引き上げと給付の引き下げを行わなければ、たちまち年金収支は赤字に転落します。