ゲーム業界の雄・任天堂がDeNAと提携してソーシャルゲームに参入すると発表してから、はや1ヵ月。人気キャラクターをはじめとした多数の知的財産で他社を圧倒する任天堂と、ソーシャルゲーム市場で勝つためのノウハウを有するDeNAの提携は、「業界の新旧対決」とも目されていた。今のところ市場は好意的な反応を示しているが、その先にはどんな未来が待っているのだろうか。ゲーム業界関係者の本音を交えながら、改めて検証したい。(取材・文/上野智、編集協力/プレスラボ)

新境地で存在感を示せるか?
ゲームファンや業界関係者の本音

任天堂とDeNAの提携発表から1ヵ月。ファンやゲーム業界の関係者は、両社の相乗効果をどのように見据えているのか 
Photo:東洋経済/アフロ

 家庭用ゲーム機の歴史を変えた「ファミリーコンピュータ」の発売から32年。ゲーム業界の雄として走り続けてきた任天堂が、ついにソーシャルゲーム市場へ乗り込んできた。

 3月17日に発表された任天堂とDeNAの業務・資本提携。ソーシャルゲームで大きな成功を収めてきたDeNAとは、「ゲーム業界での新旧対決」とも目されていた。業務・資本提携については以前から噂は聞かれていたものの、ライバル同士である2社が実際に手を取り合ったことに、驚いた人も多いだろう。

 発表されているのは「キャラクターを含む任天堂の知的財産を活用したスマートデバイス向けゲームアプリの共同開発・運営」「多様なデバイスに対応した新しい会員制サービスの共同開発」だ。両社は総額220億円の株式をお互いに取得しあう。現在のところ、共に株価は上昇しており、市場関係者はおおむね好意的に見ているようだ。

 さて、発表から約1ヵ月が過ぎた今、この提携をゲームファンや業界関係者はどう見ているのだろうか。

「結局、何本か任天堂が持っているゲームのスマホ版を出して、終わるんじゃないかな。今の業務提携の内容だと、まだ具体的に何をやるかよくわからないし、それほどワクワクはしない」

 街角からはそんな声も聞こえてくる。

「任天堂側がしっかりブランド管理を行わないとコケると思う」と話すのは、とあるソーシャルゲーム会社で運営を担当していた鈴木将道氏(仮名・26歳)だ。ゲーム業界関係者には、「様子見」の反応が多いという。そこにはどんな理由があるのだろうか。