自立した編集者の集団

中野 書籍編集部では、毎月個人の売上データが配布されます。あれはドキドキしますよねー(笑)。

三浦 あと、単品ごとの収益がわかるデータも配られます。

書籍編集局第1編集部 編集長
市川有人(いちかわ・ゆうじん)

大学卒業後、人文系出版社、ビジネス系出版社を経てダイヤモンド社入社。2016年より現職。担当書籍に『情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』『「超」入門 失敗の本質』『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』『医者が教える食事術 最強の教科書』『知的戦闘力を高める 独学の技法』等がある。

市川 ああしたデータって以前の職場にはありました? ここまで個人ごとにヒモ付けられた数字を把握できる会社って少ないんじゃないかと思うんですが。

中野 返品も含めてすべて数字が分かる、というのは珍しいと思います。

横田 あれはすごいと思う。本当に最低限なんだけどとても合理的な仕組みになっています。新刊の売上だけでなく、過去に出した本の売上もしっかり評価対象になってますし。

市川 昔からこういう仕組みだったわけではなく、徐々に変わってきたみたいですね。編集者にもいろいろなタイプがいるから、点数はすごく少ないけどヒット率の高い人や、初速は目立たないけどロングでコツコツ売れる人もいる。そういう時に、一律に点数とか新刊の売上だけで見ると、目標がかえって足かせになっちゃいますよね。いまは個人個人が自由にやれる環境が整って、自立した編集者が集まってきて、ちょうど良い感じになっているのかなぁと。

書籍編集局 第3編集部 副編集長
横田大樹(よこた・ひろき)

大学卒業後、他の出版社を経て2011年7月入社(入社時33歳)。2014年7月より現職。担当書籍は、『統計学が最強の学問である』『自分のアタマで考えよう』『ゼロ秒思考』『起業のエクイティ・ファイナンス』『ブロックチェーン・レボリューション』『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』等。

横田 やっぱり管理しようとすればするだけ、やる気のある編集者ほど逆に売上の最大値が落ちていく気がします。やる気のある人は基本的に放っておけばいいんですよ(笑)。でも、それを許してくれる会社はあまりないですよね。

三浦 最後のところでもう少しつくり込みたいけど、毎月本を出さなきゃいけないとかガッチリ決まっていると、どうしても「この程度で仕方ないか」という部分が出てきちゃいます。だから、もうちょっと頑張れば必ず売れる本にできるという気持ちがあるときは、最後の最後で「ゴメンナサイ、今月は無理です!」みたいなことも最悪言えるという雰囲気はあるかも(笑)。

市川 編集者にとって点数ノルマってけっこう大きいですよね。それによって作業が規制されるし自分の時間も規制される。だからつくり込んでいけなくなる。そこを取っ払っているというのは大きいと思います。でも三浦さん、スケジュールは守って下さいね(笑)。