人材の多様性
市川 新人育成に関してはまだ課題はあるけど、ここ数年でかなり意識は変わってきていると思います。さっきの三浦さんの話じゃないですけど、編集長やデスクはもちろん、局全体で経験のある人が若手にいろいろなアドバイスする風土ができている。うちは「出版界の巨人軍」ってよく茶化されたりしますけど、ヒットメーカーが次々入社してきて、その人たちが若手に対してあれだけ丁寧にアドバイスしているってすごいと思うんですよね。持っている情報を自分で抱え込んだりしないし、ノウハウもすべて公開しているし。
横田 確かにそれはそうですね。
市川 僕が所属する第1編集部だと、今は全員で若手を育てようっていう感じです。誰か1人が教育担当になるんじゃなくて、皆で盛り上げてアドバイスしていこうと。僕自身は、できるだけデスク割も部署間の垣根も超えられればと考えています。
中野 たしかにうちの会社の良いところって、10万部クラスの経験者がたくさんいることですよね。どこを見回しても皆が一家言持っているから、ちょっと訊いたら参考になる答えがいっぱい出てくる。編集マニアにとっては超楽しいです(笑)。
横田 あと、多様性が保たれていることも重要です。硬い本をつくっている人って柔らかい本が売れても認めないような面ってあるじゃないですか。でもうちの場合、世の中には多様な価値観があるし、多様な商品があってもいいという文化です。柔らかい本をいっぱい売っている人も、硬くてしっかりした本を売っている人を認めているし、逆もまた然り。自己啓発書や実務書、学術書に近いものとか、翻訳書で硬いもの柔らかいものとか、さまざまなジャンルで実績を上げている人がいます。だから中途で若手の人が入ってきても、自分がこの先どの道に行くかを考える参考になりますよね。
市川 モデルがたくさんいるということですね。その点は僕も強く感じます。中小の出版社だと、カリスマ社長がいて、その思想に社員が共感してやっていくケースは多いと思うんですが、ダイヤってそういう面はない。バラバラだけどそれがうまく機能しているから、若手は自分に合ったタイプを多様なモデルから自由に選ぶことができる。タイトルは長くしろという人もいれば、6文字以内!と公言している人もいるし、コンセプト設計がすべて!という人もいれば、ひたすら著者の魅力に取り憑かれてつくる人もいて、バラバラですよね(笑)。でも、ダイバーシティってそういうことだと思うし、そこから強さが生まれる気がするんです。組織って同質化しやすいけど、同質化はいずれ弱体化するんじゃないかと。