「サプライヤーの1社が、支払いを求めて実力行使に出たんです!もうすぐこの部屋に乱入してきます!早く避難して!」

「ここは誠意をもって話をしたほうがいいんじゃないですか」健太はチョウに言った。

「そんなこと聞く連中じゃない。ここは私と健太で対応するから、スティーブは早く反対側の部屋に!」

「わかった!あとはよろしく!」と言い残し、スティーブは急ぎ足で部屋を出ていった。

 いつの間にか健太は、乱入者と対峙する役割になっていた。

「チョウさん、2人で大丈夫ですか?」健太はびくついて尋ねた。

 チョウはにっこり笑い、「大丈夫、大丈夫、心配ない!」と答えたが、健太にはただの空元気にしか見えなかった。

 それからすぐに、例の集団がGM室に乱入してきた。50名ほどいるので、全員は部屋に入り切れない。各々ヘルメットをかぶり、角材や鉄パイプを手にしていた。

 リーダー格らしき男性がチョウに向かって大声でどなり散らした。周りの何人かは、手にした角材でテーブルを叩いて威嚇してきた。

「何て言ってるんですか」健太はチョウに小声で尋ねた。

「滞っている支払いを今すぐ払えって言ってるんだ。年末には従業員に給与を支払わないといけないから、サプライヤーも必死なんだよ」

「じゃあ、少しでも支払って引き取ってもらいましょうよ」健太は妥協策を提案した。

「それは絶対にダメだ!」チョウは激しく否定した。

「彼らは、危害は加えないから、安心していい」とも付け加えた。

 チョウは、相手にどんなに威嚇されても、向こうの言い分を穏やかに聞いていた。

 小1時間もすると、乱入者たちも緊迫した雰囲気を維持できなくなり、思い思いにリラックスし始めた。どうやら長丁場になりそうだ。

 そこに警察官2名がやってきた。チョウがあらかじめ通報しておいたのだろう。

 警察官はなだめるように乱入者たちに話しかけた。相手も、どことなくリラックスしている。不思議なことに、和気藹々とした雰囲気になってきた。