顔を出すと、遠藤はいなかった。後任の支局長によると、遠藤は3年前、東京に戻ったものの、早期退職で辞めたという。

 夜、スナックれいみの前を歩いた。明かりが赤々とつき、店内からカラオケの声が聞こえる。れいみは、今では遠藤の後任の支局長と仲良くしているという。そんなことを、かつての上司で定年間際になり、今や「編集局付」という怪しげなポジションにいる飯沼が笑いながら話していた。

 30歳になった田口は、なおも独身。遠藤のことは時折、思い起こす。「左遷された身って、どういう思いなのだろう……。なぜスナックあたりで酒びたりになるのだろう……。自分もやがて、遠藤のようになるのだろうか……」

 東京に戻り、つてを頼って調べると、遠藤は死亡していた。死因は肝臓がんだった。息子がキー局の他の局でアナウンサーをしていることも知った。ブラウン管に写るその顔は、父親そっくりだった。


タテマエとホンネを見抜け!
「黒い職場」を生き抜く教訓

 今回紹介した2人の支局長から学ぶべき教訓は、「競争で勝つこと、負けることの明暗」である。働くことの動機は出世ばかりではなくなった。しかしその実、企業社会で勝つ者と負ける者の明暗は、変わらずに人生に大きな影響を与える。ビジネスパーソンである以上、企業社会ではなんとしても勝たねばならないのだ。そのことを検証したい。

1,「女性」に左右されかねない
ビジネスパーソンの浮き沈み

 社内の人事といえば、「適材適所」「成果や実績」に基づいて行われると言われる。それもある面では誤りではないのだろうが、ビジネスパーソンの栄転や昇進は、時として上層部の意向に大きく影響を受ける。そもそもが理不尽な基準なのだ。

 支局長の遠藤は、会社の競争に負け、本社を離れ、単身赴任で寂しく生きている。こんなとき、傷ついた心を癒してくれたのがスナックのママだった。