軽減税率にこだわる新聞社の主張の背景には、どんな本音があるのだろうか

 消費税率10%増税時における低所得者対策がもめている。税制改革法7条には、「低所得者に配慮する観点から、給付付き税額控除か軽減税率を検討する。その間は簡素な給付措置を実施する」と記されている。これは「法律事項」である。

 一方、昨年末の税制改正大綱には、消費税の軽減税率制度について、「関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する。平成29年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について、早急に具体的な検討を進める」と記されている。これは「与党の合意」なので極めて重い意味を持つが、法律となっているわけではない。

 このような中、前回述べた「財務省案」が出てきて、大混乱となっている。筆者は、この財務省案に賛成ではない。マイナンバーカードを使う点など多くの問題があると考えており、基本的には低所得者に的を絞った給付が望ましいと考えている。

問題の本質は「財源問題」にあり
軽減税率で失われる税率はいかほどか

 この問題の本質は、「財源問題」である。図表は諸々の対策を比較したものである。

 軽減税率(税率は8%とする)導入により失われる税収、つまりこれを導入するための財源は、すべての飲食(酒を除く)を対象にすると、1.3兆円の軽減税となる。消費税率に直すと0.5%分である。この失われる税収を所得税で賄おうとすると、現在所得税収は約15兆円なので、我々の所得税を一律10%近く増税する必要がある。

 軽減税率の対象を生鮮食料品に限定すると、その減収額は3400億円となるので、財源的には何とか対応できる水準であろう。

 現在行われている簡素な給付措置は1300億円程度、給付付き税額控除(消費税還付)だと、300万円以下の世帯に1人2万円配る案で2000億円(さらに300万円から400万円の世帯に1人1万円配ると3000億円)となる。