わが国の消費税率は2017年4月に8%から10%に引き上げることが決まっているが、その際に生活必需品の税率を低く抑えるかどうか(軽減税率)が、大きな政治問題になっている。財務省は税率を一律に10%とした上で、マイナンバーカードを使って食料品などの増税分を後から給付する試案を公表したが、どうやら混乱に輪をかける結果となってしまったようだ。この問題は一体どのように考えればいいのか、そもそもの原点に立ち戻って検討の視点をチェックしてみたい。
政府とは何か、税とは何かを
理解することが全てのスタート
人間社会では、ゴミの収集のように誰もがやりたがらないが、やらなければ健全な社会が維持できなくなる仕事がある。それを、「公共財や公共サービスの提供」と呼んでいる。そして人間は「公共財や公共サービスの提供」をやってもらうために政府をつくったのである。ところで、公共財や公共サービスの提供(=一般に「給付」と呼んでいる)を行うためには財源が必要となる。そこで人間は、「給付」に当てる財源として政府に徴税権を与えたのである。
以上のことから、次の2つの公式(原則)が導かれる。
1.負担が即ち給付であること(給付を手厚くしようとすれば、負担を上げるしかない、あるいは負担と給付はバランスしなければならない)
2.負担(徴収)も給付(分配)もシンプルに設計しないと、管理コストがかさんでムダが多くなること(これが、市民が本能的に「大きな政府」を嫌う根本的な理由である。要は、100円寄付をしても、現地に届くのが10円や20円では困るということである)
それでは、なぜ消費税率を上げる必要があるのか、という問題から検討してみよう。
社会保険料は目的税の一種と考えていいので、租税負担率と社会保険料負担率を合計した国民負担率(対GDP比)をみると日本は39.8%(2011年)で、OECD諸国(トルコを除いた33ヵ国)の中では下から7番目である(もちろん平均よりかなり低い)。G7の中では、日本より低いのはアメリカだけである。つまり、日本は小負担(低負担)の国である。
次に給付の代表格である社会保障支出をみると日本は23.7%(対GDP比、2011年)でOECD諸国(34ヵ国)の中では上から14番目となる。もちろん、平均より高く、日本より上位にいるのはG7ではフランス、イタリア、ドイツの3ヵ国しかない。つまり、日本は中福祉の国なのだ。