新社長以下の執行体制をサポートする配慮から、厳しい助言は取締役会が終わってから、別室で会長、社長、藤原さん、私での総括ミーティングを行っていました。これは新社長への教育の場でもあったのでしょう。私は取締役会でどんどん発言していたので、その姿を見て反省して「言い過ぎですか」と聞いたら、「いや、君の場合は毒がないからいいんだ」と言われました(笑)。重鎮でありながら思慮深い藤原さんと、自由にものを言う私という組み合わせも、木内さんが考えられた上での人選だったのかもしれません。

 一つ思い出に残っているのが、社長に就任したばかりで遠慮しがちだった松井さんに「たとえ会長やセゾングループのOB、OGと見解が違っても、経営者はあなたなんだから遠慮せずに思う通りにやればいいですよ」と当事者たちの前で言ったこと。松井さんからは後になって、「同じ状況を乗り越えた安部さんからの言葉で、気が楽になった」と言っていただきました。

 私自身、会社更生手続き中に支援してもらった旧セゾングループには感謝しつつも、経営に対する考え方が異なるときは絶対に譲らなかった。社外取締役という外部の立場で、キャリアの浅い経営者を守るという役割もあったかもしれません。その後、松井改革でV字回復され、良品計画を今に至る超優良企業に導かれたことは、皆さんご存じのとおりです。

迎合型、万年野党型、自己顕示型――
社外取締役に向かないタイプ

 社外取締役を置く意味は、会社が置かれている状況や業界の特徴によって変わるため、一概にはいえません。私は最近、きもののやまとの社外取締役になりましたが、ここでの役割は良品計画のときとはまた異なります。

 きもののやまとの会長は、伝統的な事業を引き継いだ3代目で、継承後に極めて革新的で優れた経営を行っており、流通業界で著名な方。私とは、何でも話し合える30年来の古い友人です。長年社外取締役を務めておられる高名な顧問弁護士の先生の社外取締役を先々継承できるようにとの期待で後任を依頼され、引き受けました。

 今年夏から先生とオーバーラップしていますが、先生は一貫して「創業精神と、会社が掲げる理念に対して実際の経営がもとることがないかどうか」の役割に徹しておられて、私自身も教えられています。会長は客観的にものを見ることができるし、自分の利益のために組織を道具にするようなことは決してしない経営者ですが、それでも外からの目で、常に理念に照らし合わせて「是か非か」をチェックし、問題があるときにはきちんと苦言を呈してほしいと言います。

 加えて、私には上場企業経営者としての問題意識やガバナンスフィルターをかけた発言を期待しているようです。ときどき、親しい人間を社外取締役に据えて馴れ合いの関係になってしまうケースがあります。私もこの場合は友人ですが、相手の感情を忖度したり、あいまいにしたりしないでもの申すよう、自らを戒めています。

 なぜなら、社外取締役は企業の「お目付け役」であって、迎合するような振る舞いがあってはならないからです。自分の立場を守ろうとするあまり、嫌われないように立ち回ってしまうタイプの人がいますが、それでは外から別の視点を入れるという目的を果たせないどころか、間違った経営方針にお墨付きを与えることにもなりかねません。

 他にも、もっぱらアンチテーゼを述べる「万年野党」のような人。自己顕示欲が強く、自分の存在感を出すための演説を朗々としたがる人。質問が本質的でないと気づいたときに軌道修正することができず、延々とむだな議論を続けてしまう人――。このようなタイプの人が社外取締役になると、効果よりも弊害のほうが多くなってしまいます。

 社外取締役に求められる役割は企業によって異なりますが、実は単純で明快だと思います。経営についてそれなりのキャリアと知見があり、かつ目の前の問題について短期当面の対応策だけでなく長期的な視野も併せた提言ができることが望ましい人物像と思います。