2015年10月の英国・ロンドンの平均住宅価格は、10年前に比べ96%も上昇した(英国統計局)。激しい高騰だが、最近は上昇ペースに鈍化が見られるようになった。
ロンドンの高級百貨店ハロッズから北東に数分歩くと、超高級マンション、「ワン・ハイドパーク」がある。このコラム(「欧州がしたたかに取り込む 中国人もかすむ“本物”の爆買い」)でも一度触れたことがあるが、ここは不動産ブームの象徴として、頻繁にマスメディアに登場してきた物件である。
先日の出張時に見に行ってみた。1階のテナントからして「バブル度」が違う。スイスの高級腕時計メーカーであるロレックスや、3000万円以上のスポーツカーが並べられた英マクラーレン・オートモーティブのショップが見える。最上階の広大なペントハウスは、14年5月に1.4億ポンド(当時約240億円)で売却された。東欧のスーパーリッチが買ったという。
近年のロンドンにおける不動産ブームの要因は、第一にそういった海外からの投資資金の流入が挙げられる。第二に、そもそも英国は日本と異なって生産年齢人口が増加しており、住宅購入ニーズも高まっている。しかも、ロンドンには優良物件を求めて国内の高額所得者も集まってくる。
このように需要は強いのに、住宅の供給には制限が多々ある。景観や環境が重視されるので、東京のように続々と高層マンションを建築することはできないのだ。
しかし、さすがに英当局も住宅価格高騰のリスクを警戒している。英中央銀行であるイングランド銀行はこの問題を、金融政策委員会(MPC)ではなく、マクロプルーデンス政策の金融安定政策委員会(FPC)で議論している。