マンション市況を語る上で、見るべきデータは決まっている。また、その見方もプロはメディアの記者とは違う。これからマンションを買いたい人、売りたい人が知りたいことは、「現状把握」と「将来推計」である。どうすればいいのか。「プロの見極め方」をお披露目しよう。
まず、最も一般的なデータは不動産経済研究所が発表している「マンション市場動向」だろう。テレビのニュースで毎回のように取り上げられている。これは新築マンションの供給状況を集計したもので、少なくとも市場全体の90%以上を把握している。
主なデータは、供給戸数と平均価格と初月契約率の3つだ。この中では、初月契約率が特徴あるデータとして使われることが多い。しかし、このデータを参考にしている業界関係者は多くない。というのも、このデータは自己申告制で報告されたものなので、実態を完全には反映していないと思う向きが多いからだ。また業者は、初めから売れないほどの戸数を売り出すことはなく、初月契約率が下がるようなら供給戸数を減らすのが常套手段となっている。確かにこのデータは、好不調の目安が70%と言われるものの、ほとんどの月で70%を超えているのが実績になっている。
マンション動向を語る上で
真に見るべきは市場規模
こうなると、不確実性を極力持たないデータを分析してみることが必要になる。筆者が見ているのは、市場規模だ。どう計算するかというと、「供給戸数×平均価格」で計算する。たとえば、2015年の首都圏の年間供給は9.9%減の4万0449戸で、平均価格は9.1%増の5518万円だったので、これを掛け合わせる。結果は2.23兆円で、前年の2.27兆円を下回っている。市場は前年よりもやや小さくなり、デベロッパーの売上は微減していることになる。
この評価からは、昨年10月に発覚した「杭の偽装問題」が需要を冷え込ませていることがわかる。これがなければ市場規模は拡大しそうだっただけに、急ブレーキと言えよう。実際、12月の供給戸数は前年同月比で3200戸ほど少なくなっており、珍しく初月契約率も70%を割り込んでいる。これは少なくとも、0.1兆円以上の落ち込みとなっている。
読者諸氏のなかには「不動産価格が上がっていると業況がいい」と思われる方が多いかもしれないが、業界は市場規模が大きくならないと業況がいいとは認識しない。実際のところは、この市場規模はほとんど変わらないのが一般的だ。2015年のデータに見るように、供給は9.9%減で平均価格が9.1%増ということは、価格が上がれば供給は減り、市場規模はほぼ同じになることがわかる。