中古マンション価格が値上がりしているが、市場の需給バランスはよくない。「高く売れそうだから」と安易に売却を検討すると、想定外の安値でしか成約しない場合もある

 中古マンション価格は3年前と比較して首都圏で2割超上がり、都心では4割を超えている。これだけ高くなったら、売りたくなる人が増えるのも理解できる。しかし、同じことを考える人が多いので、現在の市場環境は、価格は高いが需給バランスは緩い状況になってきている。

 売却が容易ではない市場環境のなか、成功と失敗の差が劇的に生まれる可能性が高い。今回は売却の成否の鍵を握る3つの数字を把握してもらうことで、「どのように売るか」を明確に思い描いてもらいたい。

「杭の偽装問題」で物件需要が低下?
マンション売却で心得るべき3つの数字

 まず、この3年間の値上がりを我々が予見していたことを立証しておこう。筆者は拙著『マンションを今すぐ買いなさい』(2013年12月、ダイヤモンド社刊)の中で値上がり予測をしており、ほぼ的中させている。

 そこでは、「2年後に15%アップ」と明記している。この予測は、以前の金融緩和の再現という論理展開であった。後から振り返ると、理由も結果も想定通りだったわけだ。また最近では、連載第6回「マンション価格がいよいよ頭打ち!今ここで決めたい自宅の売買」にて、在庫の急増を理由に、そろそろ価格が頭打ちしそうなことをビッグデータ分析から予測した。その価格の天井は、今年度末である可能性が高い。

 それに加えて、足もとでは「杭の偽装問題」で傾斜するマンションに対する疑念が、市場全体の需要を冷え込ませている。この対応に追われる開発事業者側の供給計画の先送りが始まると、市況の変調はかつての「姉歯事件」の様相を呈し、さらに制度変更を伴うに至って、大混乱するかもしれない。関係者の直近の声を聞くと、「まだいける」と思っていた事業者の見解が、「先行きは怪しい」というものへと変わってきている。マンション市場は一度冷え込むと閑古鳥が鳴くことも珍しくないので、注意が必要だ。

 本稿では、これからマンションを売ろうと考えている人が知っておきたい「基本的な3つの数字」(販売期間、売出と成約価格の乖離、想定成約価格)を紹介しながら、売主が損をしないための賢い物件の売り方を指南しよう。

 まず、「基本的な3つの数字」を説明しよう。売出と成約の関係を理解すると、売却時のストレスを低くすることができる。

 第一に、「販売期間」に関する数字だ。売り出してから成約するまでの期間は3ヵ月以内が75%を超える。1ヵ月目に約25%、2ヵ月目までの累計で58%なので、売り出した月に4件に1件、2ヵ月目に半分以上、3ヵ月以内に4件に3件は契約に至っている。つまり、3ヵ月で契約できないならば、売れないリスクがかなり高いことを意味している。