たとえば、僕が「ライフハッカー」の2015年12月10日公開の記事で『物欲なき世界』(菅付雅信・著、平凡社・刊)を取り上げたのは、これからのライフスタイルなどに関心の高い「ライフハッカー」読者にも有益な情報だと考えたからでした。

そこで僕は「ライフスタイル」に関連するいくつかの言葉をキーワードにしながら、その本を読むことにしたのです。

キーワードを意識しながらページをめくっていくと、関連する箇所がどんどん目に飛び込んできます。

いま話題になっているサードウェーブ系のコーヒーショップなどについて書かれた部分には当然、ライフスタイル関連の単語が使われていますから、少なくともその箇所の前後を読めば、それだけでこの読書の「目的」の大半は果たせることになります(ブックレビューを書く場合には、もう少し全体にも目を通す必要がありますが)。

キーワードの含まれている部分だけではわかりにくい場合、その箇所から数ページをさかのぼって読んでみるのもおすすめです。あるいは、その箇所が含まれるセクションを少し詳しくチェックすれば、たいていは内容を把握できます。

「すべてをきちんと読まなければならない」という強迫観念から抜けきれていない人からすれば、とんでもない読み方に映るかもしれません。
もちろん、熟読すればすべてをインプットできてしまう方、ゆっくり読む時間がたっぷりある方は、これまでどおりの読み方をしていただければと思います。

一方、時間がないせいで、本を開くまでの心理的なハードルが高くなって困っているという人は、ぜひこの「キーワード検索」を念頭に置いてみてください。かなり本が読みやすくなるはずです。

(第22回に続く)

印南敦史(いんなみ・あつし)
書評家、フリーランスライター、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役
1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。
「1ページ5分」の超・遅読家だったにもかかわらず、ビジネスパーソンに人気のウェブ媒体「ライフハッカー[日本版]」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。
その後、ほかのウェブ媒体「NewsWeek日本版」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などでも書評欄を担当することになり、年間700冊以上という驚異的な読書量を誇る。
著書に『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)のほか、音楽関連の著書が多数。