地元大学生ボランティアを募った
「愛媛フェア」inマレーシア

 ところが、先日KLツインタワーの伊勢丹で行われた愛媛フェアで面白い体験をした。

 愛媛フェアでは、もちろん愛媛の特産品を売っている。みかんをはじめとするさまざまな柑橘類とそれらのジュース、宇和島特産のじゃこ天、地魚のみりん干し、干物や加工品、日本酒などが並べられていた。

 そこで目を引いたのは、小売りをしている日本人に、地元の生産者のおじさんおばさんだけではなく、ずいぶん若い人が混じっていたことだ。尋ねてみると、若い人たちはみな、愛媛大学の学生さんだという。このフェアに先立ち、募集したのだ。もちろん、必要経費は出るものの、給料はない。つまり彼らはボランティアである。

 筆者が話した女子学生さんは、経営学専攻の3年生だった。「勉強になると思ってきました」と語っていた。

 今の大学生、とくに地方の大学生は、閉塞感を感じている人が多いように思う。世の中はグローバルだと言っているものの、自分の日常は地方都市のあまり大きくない大学で授業を受ける毎日だ。就職にも不安がある。

 そういった大学生を、このイベントはうまく「巻き込ん」だ。英語でのセールストークに頭を悩ます生産者と、海外に行き経験を積みたい地元大学生がうまく手を結べた例だ。ここで重要なのは地元大学生であること。自分たちが慣れ親しんだものだけに、セールストークにも力が入る。製品の特長を一生懸命訴える。

 彼らが英語でどれだけ売り込む力を持っているかはわからない。だが、そのモチベーションの高さをみれば、現在の少々の実力不足には目をつむってもいいと思えるほどだった。それにたぶん英語力だけでいえば、地元生産者が売るよりもずっと良いだろう。

 彼らは皆一様に、このチャンスを喜んでいた。地元への貢献とグローバルレベルでのビジネス体験を同時にできるチャンスだからだ。つまり、地元業者と学生がwin-winの関係を持ち、学生が物産展というビジネスに巻き込まれているのである。

 日本のビジネスには、こういったwin-winの巻き込みがもっとたくさんあっても良いと思う。win-winの関係は、さまざまな人々のインセンティブを把握し、適切な相互依存関係(ゲーム)を設定してやることによって生まれる。されにそれは、持続可能(サステイナブル)な関係となる可能性が高い。

 今回、物産展に参加した学生にとって本当に良い経験になったのならば、その学生はその経験をいろいろなところで話し、その話を聞いた後輩学生にとっての新たなインセンティブが生まれるだろう。そうやって、希望学生が多くなると彼らの間で競争が始まる。その競争を勝ち抜いた学生が物産展に参加できる。そうすると、よりレベルの高い販売が可能になるのだ。それは、物産展側にもまた、地元大学生を巻き込む大きなインセンティブをさらに提供することになる。

 こうやって、お互いの行動がお互いのインセンティブをますます強くすることで、持続可能な関係が出来上がる。人のポテンシャルを活かす最良の方法であると筆者は考えている。