失敗を乗り越えて、品質で勝負!

 日本交通で黒タクのサービスが始まったのは2001年。規制緩和により、低価格タクシーなどが次々新規参入する中、「これからはタクシーを拾う時代から選ぶ時代になる」という川鍋社長の方針で、料金は下げない代わりに質の高さという付加価値で勝負しようと誕生したのが、タクシーとハイヤーの中間の存在である「黒タク」です。

 当初2台からスタートした黒タクは「サービスの質が高く、まるでハイヤーに乗ったような気分だ」と、大変評判を呼び、看板商品となりました。もともと法人顧客が強かったため、そのニーズにもマッチしたのです。そこで「黒いほうが売れる」と黒タクを量産。7割以上が黒タクとなった時期もありました。他社も次々と黒い車体のタクシーを投入。街中が黒タクで溢れるようになりました。

 すると今度は、黒タクに一定レベル以上のサービスを期待したお客さまから、クレームが入るようになってきました。量産した結果、サービスの質が落ちてしまったのです。こうした状況を改善するべく、2007年にはスタンダード80という80項目の黒タク運転手向けの基本マニュアルを作成。

 心構えから身だしなみ、接客、車内の整え方などが細かく規定されました。また、一定以上のサービスの質を担保するために、黒タク乗務員には厳しい基準が設けられ、各営業所の黒タク保有台数の割合も定められました。

 一方で社長の肝いりで、このマニュアルがきちんと守られているかどうかの「スタンダードチェック」という、社員による抜き打ちの品質チェックも始めました。

 「最初は反発もかなりありましたが、このチェックでは、チェックの後すぐに名乗り、『チェックでした』と明かし、その場でフィードバックすることで徐々に受け入れてもらいました。フィードバックでは、モチベーションを上げるため、いいところはほめるように心がけています」と徳山さん。川鍋社長も自ら乗車し、スタンダードチェックを行っているそうです。

 こうした取り組みが実を結び、現在では、黒タク比率は45%ほどに下がりましたが、品質は向上し、「日本交通の黒タク」ブランドは見事に復活しました。