統計学でヒットは作れますか?
川村 ところで、西内さんは初めて買ったCD覚えてます?
西内 恥ずかしい感じなんですけど、m.c.A・Tの「Bomb A Head!」ってラップの曲でした。
川村 懐かしい! めちゃくちゃ時代を感じるなぁ。
西内 小学校の頃だったのでよくわからないまま買ったんですけど、世の中的にも一発屋みたいな扱いをされて、その翌年も翌々年も、まったく似たような曲が出てこない。でも、そのうち「ヒットはしないけど、いいラップをやってる」みたいな人がアンダーグラウンドでちらほら出てきて、自分が高校生くらいになったときには「普通にラップやってます」みたいな人がメジャーデビューするようになって。
川村 「Bomb A Head!」は早すぎたわけですね(笑)。確かにいびつなヒットが出て、数年後にじわーっと全体のムーブメントとして浮上してくることは多いですね。
西内 つまり、そういう自分の経験を振り返っても12年周期は説明がつくところがあって、音楽業界も一つのジャンルが売れたからといって方程式を変えずに長く引っぱりすぎると、その次にわけのわからないやつが出てこれなくなって、次の世代の人たちがノレる音楽が生まれなくなってしまうんじゃないかなと。
川村 音楽業界は実際そういう状況に陥ってしまっているのかなという気もします。
西内 いずれにしても、オリコンを20年前までさかのぼっていた頃から、音楽に限らず「人気」とか「センス」とか「クリエイティビティ」っていうものの実態を統計学で明らかにしたいという興味があったんだと思います。