次期大統領の優先課題は社会的な分断の修復
──大統領交代で、世界にはどのようなリスクがありますか。
もしもトランプ大統領が誕生すれば、テールリスク(発生確率は低いが甚大な損失をもたらすリスク)は高まるでしょう。世界で深刻な対立の火種がある中で、中国との軍事的な衝突すらあるかもしれない。米国の世界への影響力や、これまで米国が築いてきた秩序が破壊されて、取り返しがつかなくなるかもしれません。トランプ政権の下では、米国は一方的に相手に責任をなすり付ける国になり、同盟は弱くなる。Gゼロ(リーダーシップなき世界)の状態がさらに進むことになるでしょう。
日米同盟にとってもトランプは脅威となります。貿易協定で日本に責任を押し付ける一方、防衛面でのコミットメントはあいまいになる。日本にとっては最悪です。
一方、ヒラリー大統領なら、現在とあまり変わらないと思います。共和党のブローカー・コンベンションでポール・ライアンが選ばれ大統領になったとしても、ドラマチックな変化はないでしょう。
──あなたは著書の中で、「独立するアメリカ」を提唱し、米国は国益を優先して国外の問題解決に手を出すべきではないと主張しています。トランプ氏の「一方的なアメリカ」とどこが違うのですか。
非常にいい質問です。私の言う「独立するアメリカ」とは、国内の課題解決に集中することで米国が統一された状態となり、米国が世界の国々の模範、言い換えれば目指すべき灯台となるべきだということ。「独立するアメリカ」においては、もっと移民を受け入れるべきで、そうやって米国は歴史的にも強くなってきたのです。
一方トランプの「一方的なアメリカ」は、対外的には一方的なことを主張して関係を悪化させ、国内的には国を分断しかねない。彼は「一方的なアメリカ」の都合のいい側面だけを強調し、それに必要なコストを払いたくないのです。
──次の大統領にどんなことを期待しますか。

これからは、米国にとってよりチャレンジングな世界になる。ヒラリーやライアンのような経験のある人物が、イデオロギーとは距離を置いて議会と仕事をすることが必要だと思います。オバマにはそれができなかった。国際的な経験があり、手堅い仕事をする人物が必要なのです。
次期大統領の外交政策での最優先課題は、同盟国との信頼関係の再構築です。順番としてはまず欧州、その次が日本。カナダやメキシコがそれに続きます。
内政では、大統領選でのダメージを修復することです。選挙戦を通じて、国内に対立構造が出来上がってしまった。社会的な分断を修復し、人々を団結させる必要があると思います。