どれくらいの頻度で回すか?

 PDCAサイクルは、とにかくひんぱんに回せばよいというものではありません。毎週なのか毎月なのかは、業務効率との兼ね合いで決めることです。

 ある商社の支店に勤めている営業マンA君は、数十社の担当顧客との交渉がどのくらい進んだかを表す「受注確度4段階情報」を毎週4時間かけて作り、支店全体のものを取りまとめて本社の営業本部に送っていました。

 営業の進捗管理は本社の予算管理上もたしかに大切ですが、毎週かなりの時間を使って本社に報告する意味はあるのでしょうか?

 あるとき、会社全体で「仕事のたな卸し」運動が進められることになり、この作業が問題視されて月1回の報告に切り替えられたのです。おかげで毎週4時間かけて作っていた資料も3回分は不要になり、合計12時間も別の仕事に振り向けられるようになりました。会社全体の営業パーソンの人数で見れば、相当な時間が節約されたことになります。

 ついでにいうと、この月1回の資料も記入内容などを見直したところ3時間半で作れるようになりました。本社の営業本部でも、月1回のほうが受注の状況がつかまえやすくなったと、よい評価でした。仕事を根本から見直して業務改善された好例です。

 では、たとえば経営者がPDCAを回すとき、それぞれの仕事をどれくらいの頻度で回すのが妥当でしょうか。意思決定はスピードが大事といっても、すべてのPDCAを高速回転させるのは効率的ではありません。

 経営理念や人事制度のように、全社員に浸透させる必要があったり、運用の成果が出るまでに時間がかかるものについては、数年に一度の見直しが望ましいでしょう。一方、経営戦略にかかわる業務は変化への対応がつねに求められますから、高速回転させるのが望ましいでしょう。図表2を参考にしてください。

会計思考でPDCAを回すのが目標への近道
安本隆晴(やすもと・たかはる)
公認会計士・税理士。株式上場準備コンサルタント。
1954年静岡生まれ。1976年早稲田大学商学部卒業後、朝日監査法人(現・あずさ監査法人)などを経て、安本公認会計士事務所を設立。1990年(株)ファーストリテイリング(旧・小郡商事)の柳井正社長と出会い、以降、株式上場準備コンサルタント・監査役として、同社の成長を会計面から支えてきた。現在、アスクル(株)、(株)リンク・セオリー・ジャパン、(株)UBICの監査役でもある。2013年3月まで6年間にわたり中央大学専門職大学院国際会計研究科特任教授を務めた。2014年5月より若手経営者向けの勉強会「未来経営塾」を開講している。

(連載終了)