「ここはどん底やき」…薪鉄子(戸田恵子)が叫んだ“飢えと怒り”のド正論に、朝からぐうの音も出ない【あんぱん第76回レビュー】『あんぱん』第76回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第76回(2025年7月14日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

探偵のように
“きりり”と決めるのぶ

『あんぱん』第16週「面白がって生きえ」(演出:野口雄大)は「どん底」からはじまり「どん底」で終わる。

 腹痛を起こした嵩(北村匠海)たちを助けてくれた手ぬぐいをかぶった女性こそ、のぶ(今田美桜)たちが探していた薪鉄子(戸田恵子)だった。

「やっぱりあなたが薪鉄子先生でしたか」と探偵のようにきりりと言うのぶ。いつからのぶはそう踏んでいたのか謎だがまあいい。

 たまたま麻雀をやっていた薪を見つけたのぶと嵩はさっそく彼女の取材を始める。

「今日を生きるがに精一杯の人らに目を向けるべきやき。いの一番にやらないかんがは国民の飢餓問題」

 鉄子は勢いよく、ド正論を語り、それをのぶは熱心に速記する。嵩はメモが追いつかず「もう少しゆっくり」と頼む。が、問題解決にはスピード感が重要だと鉄子の勢いは止まらない。これはのぶが次郎(中島歩)に言われた「絶望に追いつかれない速さで」と同じ感覚だろう。