日本にとって得策なのは
米中に妥協、和解を求める姿勢

 米国は中国の南シナ海での行動を「国際法違反」と非難するが、米国は国連海洋法条約に署名すらしていない。この条約は米国が第2次世界大戦後、当初一方的に行った領海12海里(それまでは3海里)の宣言や、その外側に12海里の接続水域の設定、200海里の排他的経済水域、大陸棚の事実上の領有などを全て公認し、大陸棚の水深も当初は200mまでだったのを、地形によっては2500mまでとするなど、米国の要求をほぼ全て盛り込んだ。

 それでも海底油田を狙う石油業界には不満があり、レーガン政権は署名しなかった。日本では「議会の反対で批准しなかった」との報道(7月6日読売新聞朝刊など)もあるが、これは誤りだ。

 米国は南シナ海問題について「航行の自由」を掲げているが、米国の商船、漁船が南シナ海を通ることは少なく、米国の言う「航行の自由」は実は「偵察活動の自由」に近い。米国では「南シナ海のシーレーンを通る米国の貿易額は1兆2000億ドルにのぼる」との論も出るが、その大半は中国との貿易だろう。中国が自国にとって重要な商船の航行を妨げたことはないし、将来もまずあるまい。

 領海や接続水域であっても外国の艦船の通航は基本的には自由で、民間船舶だけでなく軍艦にも領海の「無害通航」が認められている。

 他国の領海を通る際には威嚇的行為や、兵器を使っての訓練、情報収集、漁業などをしてはならず、潜水艦は浮上しなければならないが、沿岸国に許可を求める必要はない。だが中国は軍艦に関しては事前の許可が必要、としている。

 米国は南シナ海問題では中国に厳しい姿勢を見せているが、これが全面的対立に発展することは望んでおらず、6月末に始まった環太平洋合同演習(リムパック)に中国海軍を招待し、中国艦5隻が参加している。

 昨年10月27日には米駆逐艦ラッセンが南沙諸島のミスチーフ礁から12海里以内を中国に無通告で通り、領海と認めない態度を示したが、その直後の11月3日にはソマリア沖からスエズ運河を通って帰国途中の中国軍艦3隻がフロリダ州のメイポート海軍基地に入港、初の大西洋での米中共同訓練と交歓行事を行った。両国の海軍の要人同士の往来も頻繁に行われている。

 米中双方が関係悪化を望まない以上、何かの落し所はあるはずだ。中国が米国に届く弾道ミサイルを搭載した原潜を配備するのは、米国にとり潜在的脅威ではあるとしても、米国が主導して成立した核不拡散条約で中国の核保有を公認した以上、中国が英、仏と同様に4隻程度の弾道ミサイル原潜を持ち、うち1隻を常に海中待機させる最小限度の核抑止力を持つことは容認せざるをえないだろう。

 南シナ海の北部、海南島沖の待機海面では米軍は情報収集活動を慎み、一方中国は南沙諸島には戦闘機を配備せず、米軍艦の通航を妨げない、という程度の妥協は可能ではあるまいか。

 日本にとっては昨年の輸出の23.1%が中国(香港を含む)向けで、米国が20.1%だから、米中の対立が激化し、双方の経済が麻痺するような事態になれば致命的打撃だ。対立を助長するような行動は百害あって一利もない。およばずながら、米中に妥協、和解を求める姿勢を示すことが得策と考える。