東京・吉祥寺にある羊羹と最中だけを扱う和菓子屋さん。お店の名前は「小ざさ(おざさ)」。わずか1坪の店ですが、年商は3億円。早朝から行列ができる名店です。

 本書は、78歳の「小ざさ」社長が、40年以上とぎれない行列秘話を書いたものです。担当編集は寺田庸二君。ダイヤモンド社きっての「熱い」編集者に、制作過程を聞きました。

 

「この人は本物だ」ってすぐに思った

―― よくぞ、こんな偉大なおばあちゃん(著者の稲垣さん)を見つけてきましたね。そもそもこの本のきっかけは?

寺田 この本の前に坂本光司さんの著書『ちっちゃいけど、世界一誇りにしたい会社』を担当したんです。この本では、従業員30人以下だけど日本が世界に誇りたい8社を坂本先生と一緒に、札幌~熊本まで、全国を飛び回りました。この8社の一つが「小ざさ」だったんです。

「小ざさ」の稲垣篤子社長(78)にお会いした際、すぐに「この人の本をつくりたい」と思いました。

―― それだけ第一印象で魅力的だった?

第一回 『1坪の奇跡』(前編)『1坪の奇跡』と、その“親本”である『ちっちゃいけど、世界一誇りにしたい会社』。

寺田 はい。著者となりうるかどうかの基準は、その人の持つ「精神」と「技術」にかかっています。「精神」とは、いわば人間性。すごい人間性を感じられるか。精神が透明で、きれいか。「技術」とは、著者オリジナルの卓越したノウハウを蓄積されているかです。

「小さざ」の稲垣社長は、人間性も素晴らしい方で、かつ羊羹づくりの腕は折り紙つきです。もう、「この方は本物だ!」とビビッときました。

 それで、坂本先生の本が出来上がってお持ちしたときに、「今度は、稲垣社長の処女作をお願いします」と言いました。それが、昨年の2月頃です。それから具体的に動き出しました。

―― 実際に羊羹づくりに忙しい著者ですね。打合せなどはどこで?

寺田 お店は毎週火曜日がお休みなので、その日に稲垣社長のご自宅にお邪魔して、具体的に進めていきました。