あるメーカーの経営幹部は、「最近、管理職になりたがらない連中が増えている」と嘆く。実際、若手に聞いてみると、「割に合わないですよ。それほど給料が上がるわけじゃないのに、上からガンガン言われて、下からは突き上げられて」と言い放つ。孤独なマネジャーを救う道はあるのか?

 業種や規模を問わず、いま、マネジャーの孤独を指摘する声がそこかしこで聞かれる。成果と説明責任が追及され、周囲からの支援は希薄になり、マネジャーの孤独感は増す一方だ。

 こうした環境がすぐさま好転するような即効薬はないが、マネジャーの悩みを和らげ、周囲にマネジャーになりたいと思わせるような職場を作っていくことは可能なのだろうか。

 そのヒントは、前回紹介した「対話と内省の場」にある。心理療法では、「真に聴き、評価することなく人間として尊重していることを伝える」ということ自体が、治療的であるという。

 実際、マネジャー同士の対話の場を設けると、「自分だけが悩んでいるのかと思っていた。でも、みんな同じように悩んでいることがわかってホッとした」という感想がよく出てくる。心が軽くなったり、元気が出てきたりする。このように、互いを認め、共感することの心理的効果は大きい。

体験を共有する中で、打開策が見えてくる

 もちろん、対話の効果はそれだけではない。他者とノウハウを共有する、問題解決のヒントを得る、マネジメント・レベルが上がるといった具体的な効果もある。

 実際にあった、ある企業のマネジャー同士の対話例を見てみよう。