あるマネジャーが、「最近の若いもんは元気がない」という話を始めた。日頃から十分ケアしてやっているのに、どうも覇気がないというのである。「たしかに草食だよなぁ」「ウチの部もそうだよ」と同調するマネジャーが続く中、一人が何気なくこう言った。
「本当に元気がないのかな。君の前では、元気がないのでは?」
言われた当の本人は、一瞬、きょとんとしてこう言った。「え? 僕が悪いの? 僕が彼らの元気をなくしているの? 僕の前では活き活きできないってこと?」
すかさず、周囲から笑いが起こった。「案外、そうかもよ!」
といっても、追い詰めるような冷たい雰囲気はない。本人は意外なツッコミを受け、少し立ち止まって考え始めた。目は一点を見つめながら、日頃の状況をポツリポツリとつぶやく。この独り言を周囲は温かくフォローし、彼の日頃の行動の振り返り(内省)に付き合った。
時間にすれば、1、2分のことかもしれないが、本人にとっては長い時間だっただろう。最後には、「うん、いくつか思い直すことがあった。ちょっと試してみるよ」とすがすがしい表情になった。
その気持ちは、同席した他のマネジャーたちも同じだった。気づきを得るまでの過程をリアルに共有することで、共に大きな山を越えたような一体感が生まれていた。それだけでなく、他のマネジャーもまた、「自分の場合はどうか」と考える新たな視点を得ていたのである。
マネジャー同士、交流の場を意図的に作る
自分の試行錯誤が他の人のヒントとなり、他の人からのフィードバックがまた自分の参考となる。対話と内省の場を通じて、経験やノウハウを共有し、そこから自分のマネジメント・スタイルを改善するポイントを見つけることができる。
世界的経営学者、ヘンリー・ミンツバーグ教授は、マネジメントはコミュニティでこそ学ぶことができると指摘する。ただし、こうした場は自然にできるものではない。いつもの会議の延長線上では目先の問題から離れられないし、読書会や勉強会では本の内容や感想に終始してしまうからだ。