JR東日本、JR北海道、JR西日本の3社が3月から、ICカードを用いた新幹線のチケットレスサービスを開始する。新サービスを裏で支えるのは、クラウド化されたSuicaシステム。そして、この新システムの未来には、JR東日本が掲げる「タッチレス・ゲートレス」改札が見えている。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

Suicaシステムのクラウド化が
新幹線チケットレスを実現した

北陸新幹線の改札Suicaシステムのクラウド化が可能にした新幹線のICカードを用いたチケットレス乗車。「タッチレス・ゲートレス」の未来も見据える Photo:PIXTA

 JR東日本・JR北海道・JR西日本の3社は2月4日、ICカードを用いた新幹線のチケットレス乗車サービス「新幹線eチケットサービス」を3月14日に開始すると発表した。JR東日本はこれまで「モバイルSuica」利用者を対象にチケットレス乗車サービス「モバイルSuica特急券」を提供していたが、新幹線eチケットサービスの開始に合わせてサービスを終了。今後はチケットレス乗車の対象が、モバイルSuica利用者からICカード所有者全体に拡大されることになる。

 新幹線eチケットサービスの対象路線は東北・北海道、上越、北陸、山形、秋田の各新幹線。利用にはスマートフォンやパソコンから乗車券を予約・購入できるJR東日本の「えきねっと」またはJR西日本の「e5489」会員になり、使用するSuicaやPASMOなど交通系ICカードの裏面に記載された17桁のID番号を登録する必要がある。

 登録後、「えきねっと」または「e5489」で運賃と特急料金が一体となった新たな乗車券「新幹線eチケット」を予約・購入し、利用するICカードを選択すると、ICカードで新幹線の自動改札機をタッチするだけで乗車できる。サービスの内容自体はJR東海が2017年から提供している「スマートEX」とほぼ同じだ。
 
 こうしたサービスが可能になった背景には、Suicaシステムの「クラウド化」がある。JR東日本は新幹線eチケットサービスの開始にあたり、センターサーバーで予約情報の管理から認証処理までを行う「センターサーバー照会方式システム」を新たに導入した。

 新たなシステムでは、自動改札機はICカードのIDを読み取ると、通信ネットワークを介してセンターサーバーに予約情報を照会する。ICカードのIDとひもづいたeチケットが存在する場合、自動改札機を通過できる仕組みだ。

 JR東日本によると、タッチ時にまずIDの照会を行い、新幹線eチケットが存在する場合は自動改札機を開き、新幹線eチケットが存在しない場合は通常の判定を行うため、既存の「Suica FREX定期」「タッチでGo!新幹線」などのIC乗車サービスとも共存できるという。