「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――。
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の最新刊『起業大全』(7/30発売、ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。

フェイスブックもトヨタも<br />利益は同程度なのに、<br />なぜ、時価総額は倍以上ちがうのか?Photo: Adobe Stock

ネットワーク効果/リレーションシップ・アセット

 前回に続いて、スタートアップの戦略の3つめの視点である持続的競合優位性(ディフェンシビリティ)について解説する。他社に容易に真似されないように参入障壁を築くための資産を持続的競合優位性資産(ディフェンシビリティ・アセット)と呼ぶ。そのための3番目の視点がネットワーク効果/リレーションシップ・アセットだ。

 ネットワーク効果とは、同じプラットフォームやサービスを利用するユーザーが増加することによって、それ自体の効用や価値が高まる効果のことだ。例えば、メッセージアプリを使うユーザーが増えれば増えるほどメッセージを送信できる相手が増えて、メッセージアプリ自体の価値が高まる、というのも一つの例だ。

 下の図表のように電話やメッセージアプリなども、使う人が増えれば増えるほど電話ができる相手、メッセージが送れる相手が増えて、ユーザーはより多くの価値を享受できるようになる。2台の電話(ノード)で接続数は一つ、5台の電話で接続数は10、12台で66、100台では4950となる。ネットワークを構成するユーザーの数が増えると、新しいユーザーが「仲間外れになりたくない」と、そのネットワークに引き付けられる。

 さらに、ユーザーが増えるにつれて、ネットワークをサポートする技術が成熟し、ユーザー一人あたりの費用もどんどん下がってくる(限界費用がゼロに近づく)。そうすると、そのネットワーク参加の魅力はさらに高まり、大勢の人が受け入れるようになるのだ。