「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――。
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の最新刊『起業大全』(7/30発売、ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。

事業戦略は、5~10年後の<br />ビジネスロードマップを描きながらも、<br />1~2年後のマネタイズついても考えるPhoto: Adobe Stock

「Platform Technology Fit」とは?

 「Platform Technology Fit」という概念を紹介したい。テクノロジーインフラが変わると、プラットフォームを牛耳るメインプレーヤーが変わり、そこに乗るプレーヤーも変わっていくということだ

 例えば、日本国内では2000年代に3G/ガラケーというテクノロジーインフラをベースにした、モバゲー、GREE、iモードというプラットフォームが強かった。ところが、2007年にiPhoneが発表され、4G/スマホというテクノロジーインフラが浸透してくると、3G/ガラケーベースのプラットフォームは一気に力を失ったのだ(下図表)。

 メルカリが2013年に登場して一気に拡大ができたのも、この4G/スマホというテクノロジーインフラに乗ったプラットフォーム型ビジネスだったからだ。

 メルカリが登場する前に、フリル(現在は、楽天に買収されてラクマになった)というフリマアプリがあったが、まだ、2012年ではスマホの浸透率が低く、爆発的に伸びることはなかった。また、フリルはすでに利益を出していたので大型の資金調達をやって、さらに踏み込んで、成長を加速させるという経営判断がなかなかできなかった。

 5Gというテクノロジーインフラが2020年代半ばにかけて浸透してきたら、それまでのデジタルプラットフォームのユーザー体験(アプリダウンロード→本人登録→支払い登録→使用)が非常に面倒くさく感じられるようになるだろう。4Gの10倍以上も高速でインターネットにつながり、さらに同時多接続も可能になると「究極のストレスフリー体験」が期待され求められるようになる。

 アマゾンが展開するアマゾンゴーの店舗や、アリババが中国で展開するフーマーなどは、すでに、こういうFuture Market Fitしたストレスフリーなユーザーエクスペリエンス(UX)を実装してきている。