東証再編 664社に迫る大淘汰#2Photo:Stefano Madrigali/gettyimages

東証最上位のプライム市場に移行したい上場企業の多くを悩ませているのが、市場価値をじかに測る物差しである「流通株式時価総額100億円以上」という基準だ。特集『東証再編 664社に迫る大淘汰』(全25回)の#2では、東証1部上場企業約2100社のうち、独自試算であぶり出したプライムから転落間際の企業300社を公開する。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

1部上場664社が「プライム落ち」判定
課された流通時価総額100億円以上の難題

「わずか紙ペラ一枚分なのか」。7月9日、東京証券取引所から届いた“プライム不合格”の通達を見て、ある東証1部上場企業の社長はもの寂しさを覚えずにはいられなかった。

 この日、東証は、来年4月に新設される市場区分のどこに属するかの1次判定を、上場企業に対して一斉に通達した。約2100社の1部上場企業のうち、最上位の市場に該当する「プライム市場」の基準未達は664社あった。

 各企業は判定結果に基づき、9月から年末にかけて自ら希望する新市場を選択することになる。仮に基準未達であっても、改善に向けた「計画書」を提出すれば、暫定的にプライム市場に残れる経過措置が設けられている。

 冒頭の社長も、下を向いてはいられなかった。「このタイミングでもう一度、自分たちが株式を上場したときと同じ努力をして、生き残らないといかん」と、不退転の決意に燃える。

 だが、計画書を提出して経過措置を受けるにしても、“絵空事”をうたうわけにはいかない。複数設けられたプライム基準のうち、社長にとって最大の難関が、不合格通知に未達と明記された「流通株式時価総額100億円以上」という項目だ。

「株の流通量を増やすだけなら、いくらだってできる。しかし、流通株式時価総額を押し上げるのは難しい。量を増やした分、株価が下がれば何の意味もない。流通株式時価総額が100億円に達するのは、どんなに早くても1~2年後だろう」

 東証は経過措置の期間を明記していない。だが、“猶予期間”はいずれ終わる。そのときまでにプライム基準に届かなければ、待ち受けるのは上場廃止だ。「既存の株主がいる中で、そんなばくちを打てるのか」。不安や葛藤を抱える中、決断を迫られる日がやがて訪れる。

 今、1次判定でプライム不合格の“レッテル”を貼られた664社のうち、多くの企業がこの社長と同じ悩みを抱えている。実際、東証の判定基準にのっとりダイヤモンド編集部で独自に試算したところ、300社以上もの企業が「流通株式時価総額100億円以上の基準」を大きく下回っていた。

 次ページからお届けするのが、独自試算で判明した流通株式時価総額ワースト300社の実名だ。