東証再編 664社に迫る大淘汰#1Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

三菱重工業が、東京証券取引所第1部に上場する子会社について上場廃止の検討を進めている。この子会社は株式流動性が低く、東証の市場再編で新設される最上位のプライム市場はおろか、スタンダード市場への上場維持も危うい。東証の市場再編をトリガーに、あらゆる業界で企業同士の合従連衡が動き始めた。特集『東証再編 664社に迫る大淘汰』(全25回)の#1では、水面下で動く企業の最新情勢を追った。(ダイヤモンド編集部 新井美江子、重石岳史)

「鉄の結束」を誇る三菱グループにすら
持ち合い解消を決断させる東証改革の凄み

「持ち合いが許される時代ではなくなった。是々非々ではあるが、解消を進めていく。それがグループとしての意志だ」

 三菱グループの主要企業幹部がそう語るのは、同グループ内の企業同士で加速する政策保有株式の持ち合い解消についてだ。

 今年5月、三菱食品は親会社の三菱商事から自社株を買い取り、消却。6月にはキリンホールディングスや三菱製鋼など三菱グループ12社が、それぞれ保有する三菱総合研究所の株式を一斉に売り出した。三菱UFJ銀行も、保有するグループ企業の株式放出を積極的に検討しているもようである。

 こうした動きの背景にあるのは、東京証券取引所で準備が進む市場再編だ。

 東証1部、2部、JASDAQ、マザーズの4市場は来年4月4日、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編される。三菱グループにみられる持ち合い株の解消は、その再編に向けて顕在化した動きの一つだ。

 現在の東証1部上場企業が、新たに最上位市場に位置付けられるプライムに移るためには、「流通株式時価総額100億円以上」「流通株式比率35%以上」といった基準をクリアしなければならない(詳細は次ページ図参照)。

 本特集#2『東証プライム市場「転落間際」の300社リスト、流通時価総額100億円で門前払い』で詳述するが、事業会社同士で持ち合う政策保有株式は流通株式に含まれない。従って流通株式比率が低い1部上場企業がプライムに生き残りたければ、親会社や関係会社に大量保有する株式を放出してもらうなど、流通株式数を増やすしかない。

 冒頭の三菱グループ幹部は「コーポレートガバナンス(企業統治)強化の流れに沿った持ち合い解消の動きは、今に始まったことではない」と言うが、東証再編を機にそれが加速したことは間違いない。三菱食品の株式売却要請に応じた三菱商事の幹部は「上場会社の意向に反して株式を持ち続けるのは、説明がつかない」と話す。

 経営トップの親睦会である金曜会を中枢に、戦後以来「鉄の結束」を誇ってきた旧財閥の三菱グループでさえ、持ち合い解消が粛々と進められているのだ。その結果、1部に上場するグループ企業の大半はプライム移行の目途が立った。

 だが、社名に「三菱」を冠する三菱系の1部上場企業の中で、いまだに処遇が決まらず“宙ぶらりん”の状態が続くところがある。

 それも三菱グループの“長兄”である三菱重工業のグループ内で、だ。重工は今、その1部上場企業の完全子会社化も含めて検討を進めている。