この4月にオープンしたばかりの新しい図書館。制服の色と同じモスグリーンの床が落ち着いた雰囲気を醸し出す

宮阪元子(みやさか・もとこ)
洗足学園中学校・高等学校校長

横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、女子高の教員を経て、1997年、洗足学園の国語科教諭に。教頭、副校長を経て、2017年から現職。

 

改革の積み重ねが合格実績に結実

――今年の東京大合格者20人には驚きました。

宮阪 ありがとうございます。この春、卒業した生徒たちは、コロナ禍の中で高校生活を送り、受験に臨みましたが、最後まで志を高く持ち、学び続けてくれました。

――ここ5年間で見ると、7人、7人、7人、10人、そして2022年の20人(図1)と、毎年着実に伸びていらっしゃる。

宮阪 生徒は多様な進路を選択しますが、国公立大学を目指す生徒が増えています。今年は、国公立大では東大が最も多く合格者を出すようになりました。

[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす)
森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――それまで50台後半だった偏差値(四谷大塚合不合80)が、宮阪先生が校長に就任された6年前にちょうど60になり、それからこうした実績が出たと思います。

宮阪 長年の取り組みを評価していただき、優秀な生徒さんがたくさん入学してくださるようになりました。

――元校長の櫻井義英先生が、「神奈川で一番の学校になる」とおっしゃっていたのを「へー、フェリスを抜くのか」という思いで聞いていました。当時はまだ、周りのみなさんにもそのような認識がありませんでしたから。

 それがどんどん実現していくのですごいなと。その頃から高校からの募集をやめ、音楽科も廃止していますね。

宮阪 前校長の前田隆芳先生が就任した2002年に、洗足学園大学附属中学校・高等学校から現在の校名に改称いたしました。その頃から進学に対する意識が変わってまいりました。

――以前は授業時間が1コマ70分間あったように思いますが。

宮阪 その後も60分、50分と変わり、2015年度から65分になりました。本校では、6年間同じままで卒業する生徒がいないくらい、必要であると判断したら教育内容やシステムはスピード感を持って改革してまいりました。

 2019年度からは、授業は土曜も3限まで行うようにしました。そうすることで、放課後を有意義に使うことができます。希望制ですが、ミネルヴァセミナーズを開講しています。第二外国語(フランス語と中国語)、プロに教えてもらうeスポーツ、元世界チャンピオンに指導していただくディベートなどがあります。

――安全面に配慮されているのか、生徒の出入り口は1カ所のみですね。守衛さんが女性というのは珍しい。

宮阪 よく気付いていただけました(笑)。とても素敵なことだと思います。

――建物がかなりユニークです。大学は別として、中高の校舎でこのように斬新なデザインのものは見たことがありません。

宮阪 敷地が広いので、前の校舎を壊さずに新しい校舎を建設していました。2000年に完成した時には、私も引っ越してきて、その美しさにすごく驚きました(笑)。

 教室棟は、自然光が入るよう雁行(がんこう)形にしてあります。この4月にリニューアルした図書館は「SKYLIGHT READING ROOM」といいます。洗足学園らしいおしゃれな名前です(笑)。全部ガラス張りです。浪人中の卒業生にもカードを発行して、朝から夜9時まで好きに出入りできるようにしました。

放課後になると、生徒が図書館に押し寄せてくる(上) 外部とネットワークされた小部屋が並び、小グループでの学び合いも気軽にできる(下左) 開架の書棚前にはハイスペックなMac Proが並ぶ(下右)
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