投票行動による政権交代の実現に多くの国民が胸躍らせ、「無血革命」という言葉さえ飛び交った。あの時の熱気がわずか半年足らずで、大きな落胆に変わりつつある──。鳩山政権への国民の評価である。
税金の無駄遣いをやめ、「コンクリートから人へ」使い道を転換させるはずだった。また、行政の透明性や公平性を高めるとも言っていた。しかし、現状は言葉だけに留まっていると言わざるを得ない。行財政改革は不徹底で、そのうえ、政治とカネの問題がまたぞろ噴出する始末である。選挙に勝利さえすれば、掲げていた公約を現実化できるというものではない。政治家や政党の力量に大きく左右されるのである。
鳴り物入りでスタートした鳩山政権が混迷を深めるなか、予想以上の手腕を発揮して公約を着々と実現させている政治家がいる。かつて「総理を狙う男」と自称していた河村たかし氏だ。民主党の代表選に名乗りを上げるものの、20人の推薦人すら集まらず、断念を繰り返してきた著名な政治家だ。河村氏は昨年4月に「庶民革命」を標榜して名古屋市長選に出馬。自民・公明の推薦候補などを大差で破り、衆議院議員から名古屋市長への転身を果たした。
零細企業の経営者を経験した河村氏は異色の政治家といえる。世襲や官僚OB、松下政経塾出身者といった今の政界の主流派ではなく、いわゆる叩き上げの庶民政治家である。しかも、選挙で2度落選するなど、順風満帆とは言い難い人生を送ってきた、苦労人なのである。
そんな河村氏の長年の持論が「政治のボランティア化」。政治家の世襲や固定化、特権化、さらには職業化(稼業化)が進む現状に異議を唱え、政治は本来、普通の生活者がボランティア精神で行うべきものだと、頑固なまでに主張し続ける。議員の高額報酬や多選、様々な特権にも真っ向から反対し、他の政治家から何かと煙たがられている。実際に国会議員時代、豪華な議員宿舎の使用を拒み、アパートで東京暮らしを送っていたため、半ば変人扱いされていた。
河村氏が名古屋市長選で掲げた公約は3つ。ひとつは、行財政改革を断行し、市民税を10%減税するというものだ。2つ目は、地域委員会を創設し、住民分権をすすめるという公約。小学校区ごとに地域委員会を設置し、ここに権限と財源を移譲する。地域の課題を解決するための自治組織で、選挙で選ばれる委員は皆、無報酬だ。そして、3つ目が議会改革である。