給与は未来の成果に対する「投資」
賞与は過去の業績に対する「精算」

 まず第一に押さえておくべきポイントは、一般的には「給与(基本給)」と「賞与」はそもそも評価基準が異なるということです。「給与」とは未来の成果に対する「投資」です。課長なら課長という等級に対して、会社が求めている行動や能力があります。その期待に応える成果を予見できるのか、環境や運に左右されず、同じ成果を実現できるのか、それが給与を決める際の人事評価の基準になっています。

 会社が求めている行動や能力は、人事の世界では「コンピテンシー」と呼ばれています。たとえば、実現可能な計画を立て、リスクヘッジができているかという「計画立案」。あるいは、計画のベンチマーク(水準点)を設定し、常に検証を行なっているかという「進捗管理」。こうしたコンピテンシー(行動や能力)を発揮し、さらに高い期待に応えてくれると予見できるのか。いわば「成果の再現性」の投資価値によって、一人ひとりの給与の額が決まっているのです。

 一方、「賞与」は、会社が期待する成果や業績を上げたのか、という結果がすべて。極端な話、正しく行動しても成果が上がらなければボーナスは上がらず、何の行動もしなくても運良く業績が上がれば、ボーナスの額も上がります。つまり「給与」が未来への「投資」なら、「賞与」は過去の業績に対する「精算」です。

 こう説明すると、ボーナスのほうが達成基準がわかりやすいように感じると思いますが、実は厄介な問題があります。「賞与」が過去の業績に対する精算であるなら、「○○を達成したら、ボーナスの額が上がる」「達成できなかったら、上がらない」と社員1人ひとりが判断できる、明確な目標=「達成基準」が必要になるはずです。しかし、多くの会社では、この「達成基準」が非常に曖昧なのです。

 たとえば「大阪の天田屋というタコヤキ店に明日の19時に集合」という目標であれば、時間どおりに着いたか、着かなかったのか、目標が達成できたのか、できなかったのか、誰でも判断できます。ところが、多くの会社では「西に向かって頑張って走りなさい!」といった感じの曖昧な目標しか提示されません。