超音速旅客機コンコルドの開発計画は、組織行動学の典型的な失敗事例という不名誉な称号を得てしまった Photo:AP/アフロ

 組織行動学に「コンコルドの誤り」という概念がある(『組織行動の「まずい!!」学』樋口晴彦著)。

 フランス・パリ-米ニューヨーク間を4時間弱で結ぶ、超音速旅客機コンコルドの開発計画は1962年にスタートした。しかし、計画は難航し、開発費用は当初の見込みを大幅に超過。しかも、運航開始となっても燃費が悪いために採算が合わないのではないかという懸念も途中で台頭した。

 そこで計画の再検討が行われ、開発を即中止して違約金を払う方が損失は軽微で済むという結論が出た。しかし、計画は継続された。

 69年に機体は完成したが、販売機数の採算ラインである250機を大幅に下回る16機しか売れず、結局76年に製造中止。途中で撤退していれば傷は浅かったはずだが、当時の関係者は今まで苦労したのに中止するのは「もったいない」という心理にとらわれた。

 このように、計画の途中で問題が認識されたにもかかわらず、執着により判断を誤ることを「コンコルドの誤り」と呼ぶ。興味深いことに、それに陥るのは人間だけで動物には見られないそうだ。「過去の行為に執着したり、くよくよと悩んだりするのは人間だけということらしい」とのことだ。

 前掲書によると、1575年に起きた「長篠の合戦」での武田勝頼の敗北もそれで解釈できるという。長篠城を攻めていた武田軍の兵数1.5万に対して、援軍として駆け付けた織田・徳川連合軍は3.5万。武田はここで退却すべきだったが決断できなかった。すでに兵糧や資材調達に莫大な支出を行い、将兵に死傷者も多数出ていた。これまでの労苦が水泡に帰すことに耐えられなかったという。