日銀はトランプ関税決着でも金利据え置きの“慎重姿勢”、「利上げロジック」が抱える本質課題Photo:JIJI

7月も4会合連続で政策金利据え置き
“利上げ棚上げ”予想で円安150円台に

 日本銀行は、7月30~31日に開いた金融政策決定会合で政策金利の4会合連続据え置きを決めた。また、今回、改訂した経済物価情勢の「展望レポート」は、2025年度の消費者物価上昇率の見通しを、前回(4月)から大きく上方修正した一方、それ以外はおおむね不変に維持するとともに、経済に対する下方リスクと物価に関する上方リスクの双方を挙げた。

 このうち経済情勢ではトランプ関税をめぐる日本や欧州など主要国での交渉の一応の合意などを前向きな動きとして歓迎しつつ、なお内外経済や物価に与える影響で不確実性がなお高いことを指摘した。

 一方、物価見通しでは、食料品価格を主因とする消費者物価の押し上げ寄与は次第に減衰していくと予想しつつ、企業の価格転嫁などの行動次第で価格上昇が長期化する可能性や、購入頻度が高い食料品価格の上昇が長期化すれば、家計のコンフィデンス(物価安定に対する信認)や予想物価上昇率(インフレ期待)の上昇を介して基調的物価に波及する可能性に言及した。

 植田和男総裁は決定会合後の記者会見で、こうしたリスクを点検しながら「経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と、これまでの方針を改めて説明した。

 しかし、記者会見を受けて、為替市場では利上げは当面棚上げとの見方が強まり、米ドル/円レートが一時は1ドル150円台と約4カ月ぶりの円安水準になり大きく円安方向に進むといった反応を見せた。

 市場は、日米間の関税引き上げ交渉が合意に達したことを踏まえて日銀による利上げ再開の環境が整うと想定していたために、植田総裁の利上げ姿勢が予想以上に慎重に見えた可能性がある。

 しかし、より注意すべきは、日銀の慎重姿勢が、トランプ関税の影響に対する見通しだけに起因するものではなく、日銀の「利上げのロジック」の本質的な課題を浮き彫りにしている面があることだ。