元々下請けメーカーだった福井洋傘は、卸の仕組みも流通のルートも知らない。そんななか、「ふるさと創生」を目的としたイベント出店の声掛けがあり、県などの斡旋で都内のデパートに出店する機会を得た。

 もちろん商品には自信があった。しかし、販売などしたことがないため値付けもどうしていいのかわからず、卸値で販売するなどの失態もおかしてしまったという。

福井洋傘社長・橋本肇さん

「本来なら2万円以上で売られてもいいものを1万円くらいで売ってしまっていて…。お客様に『卸値で売ってはダメだよ』と教えていただいたんです」(橋本さん)

 そのほか、デパートに訪れた顧客は様々なヒントをくれた。「特徴はどこにあるの?」「福井で作られていると分からないよ」と叱咤激励とも受け取れる、アドバイスをくれたのだ。

 そんな顧客の声を聞いて橋本さんは決意する。

「今までの傘は作り手の都合で作られていました。でも今のままでいいのか。お客様の都合で傘をつくろう。そして、自分たちの持ち味を出して必要とされる存在になろうと決意したんです」(橋本さん)

傘売り場には商品を置かない
「儲からない傘」で生き残る

福井の技術を集積して作られた「蛇の目洋傘」。様々な色のバリエーションがある

 固く決意した橋本さんが最初にオリジナル商品として制作したのが、「蛇の目洋傘」だ。江戸時代から使われた蛇の目模様の紙製の雨傘を、ポリエステルを使用して作ったこの傘。繊維の町である福井の繊維技術を生かし、骨にはメガネフレームで有名な鯖江の技術を採用。また、持ち手と石突(傘の頭の部分)は、福井県の河和田塗という本漆で仕上げた。つまり、福井の3つの技術を融合して作られている。

 当初は「こんな商品売れない!」と周りからさんざんに責められた。でも橋本さんは「そんなにみんなが売れないと口を揃えるなら絶対に売れるはずだ」と考えて、製造を進めた。結果、3万5000円以上の高額にもかかわらず、外国人を中心に人気を集めて大ヒットした。今もヨーロッパで販売すると、よく売れるのだという。

 そして福井洋傘の代表的な商品といえば、冒頭でも紹介した濡れない傘「ヌレンザ」だろう。これは元々、福井商工会議所の苦情・クレーム博覧会に寄せられた「濡れない傘」を作ってほしいという要望に合わせて作ったもの。橋本さんは「こんな厄介な依頼、絶対断ろう」と思っていたが、元来大胆な会長が二つ返事で受けてしまい、製造することになってしまったそうだ。