教育期間を終えた後は、概ね一つの仕事で頑張り続けて現役期間を終えて、その後に長い老後期間を過ごす「スリー・ステージ・モデル(3・0シナリオ)」とは異なる人生モデルが必要なのではないかといのが『ライフ・シフト』の問題意識だ。

 詳しくは、本に当たってみて欲しいが、『ライフ・シフト』では、職業人生のスタイルとして、前段階の「エクスプローラー」(放浪などで視野を広げつつ自分の適性・適職を見つけようとする人)、「インディペンデント・プロデューサー」(小さくても自分のビジネスを立ち上げる人)、「ポートフォリオ・ワーカー」(複数の仕事や社会的立場を持つ人)といった独特の職業スタイルが出て来る。また、「3・0シナリオ」だけではなく、職業人生の最後を細くても手堅く延ばそうとする「3・5シナリオ」、職業人生の中盤に働き方を大きく変えようとする「4・0シナリオ」、さらに、職業人生が長期の及ぶことを見越して、見聞を広めるエクスプローラーの時期、小さな起業を試すインディペンデントプロデューサーの時期などを交える「5・0シナリオ」などが提案されている。

「4・0」や「5・0」では、個々のステージ間に「休息と充電」のような期間の必要性が想定されていて、老後ばかりでなく、この間の収入の落ち込みないしは無収入に対する経済的備えも必要になる。もちろん、そうした移行期間は、自分のスキルを磨いたり、健康や活力の回復をもたらしたりする形で、次のステージの生産性を向上させることに寄与すると想定されている。

日本人はどうしたらいいか?
5つの基本的対策

 世界に誇っていいことだが、日本人の寿命は長い。日本人にこそ、真っ先に「長寿化対策」が必要であることは論を待たない。

 『ライフ・シフト』に書かれた戦略を日本にあてはめることを考えると、働く年代での教育の過大評価(著者たちが先生だからだろうか)や、職業ステージ間の職業的空白期間の不用意さ(一般に、退職してしまってから転職先を探すのはハイリスクな愚策であり、普通はやってはいけない)などが気になるが、現役期間を延ばすべきこと、複数の働き方を持って時期に応じて組み合わせるべきこと、自分のスキルや健康に対する「投資」が必要なこと、などには概ね賛成だ。

 日本にあって個人としてどうしたらいいのかは、子ども世代以前に、筆者自身にとっても切実な問題であるが、基本的な対策は、以下の5点だろう。

(1) 長く働く(75~80歳くらいまで)覚悟を決める、
(2) 早めに複数の仕事を持ち、特に高齢になってから働ける道を確保する、
(3) 自分のスキルと健康に、折々に時間とお金と努力とを投資する、
(4) 計算の下に将来に備えて現役時代に貯蓄する(運用は投資でもいい)、
(5) 配偶者などとの家計のダブルインカム化、

 である。