年初から大きな話題になった「タイガーマスク運動」。今回は、この「事件」を総括する。

 マスメディアで大きく取り上げられたのでご存じだと思うが、簡単にこの現象をまとめておこう。まず、昨年の12月24日夜から25日早朝にかけて、群馬県の児童養護施設にタイガーマスクの本名「伊達直人」を名乗る人物から、10個のランドセルが贈られる。これが報道されると、全国各地で「伊達直人」が出現。数多くの児童養護施設に、ランドセル、米、サッカーボール、文房具、現金、図書館などさまざまなプレゼントが贈られた。東京都清瀬市の施設には、金の延べ棒まで届けられた。これらのプレゼントは全国で1000件を超えたという。

 降って湧いたような寄付ブームではあるが、予兆はあった。昨年10月、「タイガーマスク」の完全復刻版が増刷となり、子ども時代に親しんだオヤジ世代の間でちょとした話題になっていた。大人買いして読み直した人も多いだろう。その中で、原作者の梶原一騎氏自身が「孤児院」出身であることから、「タイガーマスクと児童養護施設支援を結びつけた活動ができるとおもしろいよね」という会話が、社会貢献に関心のある人たちの間で交わされていた。それが現実になったのだ。

 だから最初にランドセルをプレゼントした「初代?」タイガーマスクは、絶対にタイガーマスク復刻版を読んでインスパイアされたのだと、筆者の仲間内では確定されている。

「善意はうれしいが…」
施設側のホンネ

 ところで、今回のタイガーマスク運動、単に「いい話」だけでは終わっていない。実は、児童養護施設では新入学児童のランドセル購入には予算が出ていることもあり、他にも施設側からすれば「もらっても、あまりうれしくない。役に立たない」プレゼントもあり、「善意はうれしいが、施設や子どもたちの事情を理解してプレゼントしてほしい」旨のアナウンスが施設側からも発信されている。

 これに対して、「善意の人を傷つける発言」「あつかましい発言だ」という批判も出ている。つまり、寄付のあり方を巡って議論が巻き起こっている。これは、日本の寄付文化を発展させるためには、非常に良いことだと思う。議論がなければ、正しい理解も、多くの人の関心も得られないからだ。

 児童養護施設の子どもたち支援を行っているNPO法人「ブリッジフォースマイル」の理事長・林恵子氏は、「今回のタイガーマスク現象のおかげで実際に寄付が増えました。また、ボランティア説明会への参加申し込みも増えています。関心を持つ人が確実に増えています」と語る。そのうえで、「一般の人たちが考えている児童養護施設のイメージと実際の現場は違う。そのことを理解した上で支援してほしい」と言う。

 たとえば、施設にいる子どもたちのほとんどは「親がいない子ども」ではない。大半が虐待や育児放棄によって保護された子どもたちだ。このことは、タイガーマスク現象の報道によって、ようやく社会に理解され始めた事情だろう。ちなみに、保護される子どもたちの在所期間は平均4.6年。つまり、ある程度施設で保護された後、親元に戻される子どもたちが多いということだ。