それと並行し、彼は2000年台後半に、サイバーメトリクスの手法を応用した選挙結果の予測アルゴリズム「Poblano」を開発。それに基づいた自身の考えと予測を「ファイブサーティエイト」というブログで公表した。

 彼が名をあげたのは2008年の大統領選挙だった。バラク・オバマ氏の当選を的中させただけではなく、全米50州のうち49州とコロンビア特別区の勝者を正確に予測した。ミズーリ州とノースカロライナ州が接戦になったが、そのことも彼は事前に予測していた。また、08年の上院選挙では35人の勝者全員を正確に予測した。

 これらの予測結果は、ギャラップ社など、世界で最も信頼される世論調査会社の予測を上回る正確さだった。これによって彼は「天才統計学者」として、世界で最も信頼のおける選挙予想人となった。

「神様」の予測が外れた
理由とは?

 その後も、10年の中間選挙における、上院、下院の選挙結果を、驚くべき正確さで予測し、州知事選挙に至ってはパーフェクトに予測した。そして12年のオバマ再選についても予測を的中させた。この選挙では、大手調査会社のギャラップやラスムッセン・レポートが、オバマの対抗馬であるミット・ロムニーが僅差で勝つと予測したが、結果はシルバー氏の予測通りにになった。これによって、シルバー氏の名声はますます高くなった。

 もちろん彼の予測は100%的中するわけではない。統計学者なので、予測は統計的だ。つまり「〇〇が当選する確率は○○%」という、天気予報のような形式の予測になる。それでも、過去の選挙予測よりはるかに高い精度で、結果を予測してきた。

 大手調査会社やマスメディアは、これまで数十年にもわたり血眼になって、結果予想をしてきた。彼の手法はそれらの試みをはるかに上回る精度で予測してきたのである。まさに「選挙予測の神様」になったのだ。

 その彼は、今年10月24日、つまり大統領選挙の直前に、候補者の当選確率予測を発表した。それは「クリントン氏86%、トランプ氏13%」というものだった。クリントン氏の「圧勝」である。よほどのことがない限り、トランプ氏が当選することはありえないという予測だ。

 だが、ご存じの通り、この予測は外れた。アメリカではこのことがショックをもって伝えられた。接戦の予測だったのならばまだしも、世界が最も信頼する人物が、ここまで確定的に「クリントン氏圧勝」と予測していたのだ。それが覆ったのは衝撃的というより他なかった。なぜ彼の予測は外れたのだろうか。