オンライン証券最大手のSBI証券と、それを追う楽天証券が共に対面営業の強化を図っている。背景には、収益源の柱だった個人の株式委託売買手数料の長期にわたる低迷がある。

 オンライン証券の業績が振るわない。個人投資家による株式委託売買の低迷により、2010年度は大手5社のうち4社の中間決算が減収減益に沈んだ。

 しかし、そうしたなか、わずかながら光明が差している事業がある。証券外務員資格を持つ社外の営業マンが、営業をかけ注文を取り次ぐ“対面営業”事業だ。

 たとえば楽天証券は、「4月に単月黒字を達成して以降、収益は右肩上がり。対面経由の預かり資産が2.5倍、営業収益は6.4倍」(坂本乘寛・IFA事業部長)と絶好調だ。

 最大手のSBI証券でも、「月次の営業収益は前年同月比150%ペース」(高村正人・取締役執行役員営業本部長)で推移している。

 まるでオンライン証券が旧来型の証券会社に先祖返りしているかのようだが、その背景には、収益の柱である株式委託売買手数料のここ数年の低迷がある。

 1990年代後半以降、オンライン証券が飛躍的な成長を遂げたのは、99年の手数料自由化によるところが大きい。既存の証券会社のように対面営業ではないため、営業店や営業マンを抱えずにすみ、低コストを実現。手数料を思い切り下げることができたのだ。

 05年12月には、東京証券取引所3市場の個人の売買代金が2兆円を突破(1日平均)。同じ頃、SBIは株式委託売買代金で野村證券を抜き去ったほどだ。

 ところが06年1月のライブドアショック以降、個人の売買代金が急収縮してしまう。いまや東証3市場の個人の売買代金は5000億円前後と、ピーク時の約4分の1。09年、SBIは米リーマン・ブラザーズを承継した野村に、売買代金で再度の逆転を許してしまう(図(1))。