ECBのトリシェ総裁は、3月3日の理事会終了後に、4月理事会で利上げを行う可能性を示唆した。ユーロの銀行間短期金利の先行きを占うデリバティブ取引であるOISレートは急騰し、9月までに0.25%の利上げが2回行われる予想が織り込まれた。

 しかしながら、周辺国の国債問題を抱えて利上げを開始して大丈夫なのか? という懸念はロンドンの市場参加者からも聞こえてくる。ECBは、食品やエネルギーの価格上昇が過剰な賃金上昇につながるスパイラルを警戒している。市場安定化策はやめずに、インフレ抑制策と両立させながら運営していく方針を示している。

 イタリア中央銀行総裁のドラギ氏は最近、インフレを警戒するタカ派的発言で目立っている。トリシェ総裁は今年10月で退任する。経験、能力から見て、ドラギ氏をその後継者レースのフロントランナーだと見なす声は多い。

 とはいえ、欧州では一般的に、イタリア人はインフレに寛容だという印象がある。また、コンスタンシオ・ECB副総裁はポルトガル人だ。ドラギ氏が総裁になると、南欧の国が総裁・副総裁を占めるため、ドイツ人が反発する恐れもある。ドラギ氏の最近の発言は、総裁後継者選びを意識して、インフレに寛容ではないことをアピールしているのかもしれない。ハト派としてECB理事会内でバランスを取る人が今は少ない面がある。